ウナべツ岳(1419m)
  穹、万物に早春の陽光が満ち溢れ、海別岳の雪稜は全身で歓喜を発
 散させて輝いている。その緩やかな麓はオホーツク海に面する海岸段
 丘に到る。標高194mのT字路あたりからスキーで若木の密生地やカラ
 マツ林地に入ったのは朝7時過ぎだった。
  海別川右岸沿いに遡行し、砂防ダムで朱円の尾根に取り付く。ミズナ
 ラ・シナノキ・トドマツ・エゾマツ・アカエゾマツ・ダケカンバの成木
 の樹林帯を抜けると(標高500m超)豁然として疎らな潅木帯の雪面
 の海原が拡がる。
この白砂の海底の緩・中斜面を登り詰めると、ハイマツ帯となる(標
高1000m)。

  

                  
 1115m台地状へ到る中腹から小海別岳を振
 り返って見る。海別岳稜線から左はじに顔
 を出しているのは斜里岳。こちら海別岳側
 から望む、小海別岳と海別岳との会合部付
 近一帯には原生針葉樹林帯が見渡せる。前
 日の降雪で幽林の趣。斜里の海岸沿いの方
 からは小海別岳裏側は見えず、登って来た

者だけの特権である。ほぼ同じ高度で森林帯と潅木・ハイマツ帯が截然と
区分けされているのは見事である。     





 なおも、スキーで登って1115mと頂上(双耳峰の低い方)との中間でア
イゼンを着ける。斜面下に隠れるハイマツにずぼることなく、さくさくの
斜面を登りきり、さすが強風が吹いている中を、双耳峰の鞍部を下降し登
り返して頂上。紺碧の空、強風、白稜。遥かオホーツク海と水平線は霞み
曖昧、流氷は視界から去って青海原であった。海底火山が陸地に上がって
来た大千島列島末端の知床連山は遠音別岳に視野が遮られるが、国後島は
明晰。昼食大休止後、スキーデボ地点に降り、愉快な5km程の滑降であ
る。
                





 元の所に戻ってきたのは13時40分頃だった。今日の海別岳は嬉々とした
スキー登山者が繰り出し賑わった。海別岳スキー山行は小清水町民センタ
ーの極楽温泉でゆっくりとし、散会とした。
                                   
今日(2002年3月31日、日曜)は大快晴に恵まれた。朱円の尾根麓の農道T字路、この日、除雪
済み、で
    熊岡・小宮・sakaguti・TAMA・中上(敬称略、アイウエオ順)のHYMLメンバー各氏と落
 ち合い、同行した。                                
知床・阿寒火山群
   (右)私と背後は斜里岳。(中)頂上目指して、背後はオホーツク海。(左)正面は遠音
    別岳、羅臼岳などはその背後に隠れている。
斜面は左下へ。峰の方に滑り降
りて行く芥子粒のようなスキー
ヤー。
 

 海別岳は知床火山群の末端、知床半島の付け
 根に位置するほぼ完全な円錐型火山である。隣
 にある斜里岳は清里の方向から見ると、同じ円
 錐型火山でも崩壊が著しく頂上部は溶岩ドーム
 となって後に盛り上がった。
  知床火山群は半島中軸にそって雁行している。
 羅臼岳から硫黄岳にかけては稜線に線上凹地が
 
 良く発達しており歩きやすい。これは根室半島・歯舞色丹島から海底の
 高まりが千島列島中部まで続く古千島火山(小千島列島)が、千島海溝
 に太平洋プレートが沈む際(図では小さい矢印)、引っ張られることに
 よる(図では大きな矢印)。即ち、プレートが海溝に斜めに沈み込む所
 では島弧前面が横滑りするのである。この横ずれの力によって皺がよる。
 これが知床・国後・択捉(大千島列島)である。
  横から圧力を受けると張りきって裂け目が出来る。これがここの線上
 凹地なのだ。この大地の裂け目にそってマグマが上昇して島弧火山列が
 形成される。海別岳は弟四期以降に陸上で噴火して山体上部が形成され
 た。噴火口は東部の標高1200m付近にある(基盤はグリーン・タフ、山
 麓には複数の鉱山跡がある)。

 小千島列島は図の矢印方向に衝き動かされて褶曲をなし、現在の北海
 道の地質構造を支配している。この動きは1200万年前から始まった。
  褶曲は南北方向に根釧台地・白糠丘陵 ・十勝平野・日高山脈・夕張
 山地・馬追丘陵・石狩平野・黒松内低地=長万部=函館平野などの凸凹を
 形成した。また、東西方向に知床・阿寒火山列(阿寒湖はこの方向に長
 方形の形をしている)・上支湧別構造線がある。遠い将来、小千島列島
 は日本海方向に衝き抜けてしまうかも知れない。
 
注  北海道の形をなす上で、道東(根室・常呂帯)が衝突して来るという「大事件」
があって白糠丘陵はその時直角に曲がったが、その後(1200万年前から)もこの新たに
始まった横ずれ運動の影響を受けているわけである。
雪面付近の太いハイマツの枝幹にスキーを囚われ
ないようにガリガリ急斜面を滑らなければならな
い。やがて、甘美な潅木帯の斜面。ヘタクソスキ
ーでも痛快。樹林帯に入ると気温の上昇で、日当
たりの良い樹木などの周りは、はっきりと解る程
の水気を含み雪面の色が変色している、湿雪で若
木も繁茂し、ツリースキーは転倒の繰り返しだっ
た。
小海別岳