『しいねちゃん肩車してやる〜、遠慮すんな〜』
短い小説が絵の下にあります↓
ある日のこと
しいねちゃんとリーヤが山道を散歩していた。
「あ〜、かったりーなー」腕を頭の後に組んで退屈を訴えるのはリーヤである。「力があり余ってるのに、これじゃ身体がなまっちまうじょ〜」
しいねちゃんは体力バカのリーヤに体力で対抗しようとは思わないので、競走でもしないかと言われないかとヒヤヒヤしていた。
「なぁなぁ、しいねちゃん、」
「ん?」
「じゃんけんして、負けた方が勝った方を肩車して、次の曲がり角まで歩く、ってのはどうだ?」
しいねちゃんは内心ほくそ笑んだ。
(リーヤはいつも最初にグーを出すんだよね。いつまでもそれに気づかないってのがバカなんだよなー)
リーヤが勝つことはまずないだろうと思うと、なんだかそんなリーヤがちょっと可哀相で、そしてかわいくも思えてしまう。
「よ〜し、勝負だ」
「じゃんけん、っポンっ!」
予想通りリーヤはグーを出し、パーを出したしいねちゃんが勝った。
「ちぇ〜っ、オレの負けかぁ。しいねちゃんじゃんけん強いなー。ほら、肩車してやるよ」
そう言ってリーヤが背を向けてかがむ。しいねちゃんは心の中でペロッと舌を出してから、いざリーヤの肩にまたがろうとして、はたと困った。しいねちゃんはローブを着ている。ほうきの柄みたいに細い物ならともかく、肩車となるとどうしてもローブのすそをたくし上げなければリーヤの肩に乗ることはできない。それに……それにローブのすそがめくれるだけでも十分恥ずかしいが、さらにリーヤの首の後ろあたりにしいねちゃんのパンツがじかに密着することになる。これは恥ずかしい。男の子としての尊厳にかかわる問題だ。まさかリーヤのやつ、バカなふりをしてこれが目的だったんじゃ……? いや、……おバカなリーヤにそれは考え過ぎというものかな……
「ホラ、早くしろよォ。どうしたんだ、しいねちゃん?」
リーヤがきょとんとした顔で急かす。どうも計算ずくではなさそうだ。
「あ、うん、そ、そうだな……」
肩車をしてもらうと恥ずかしい格好になってしまうのだが、それをリーヤに言うことが、またそれはそれで恥ずかしい。ああ、どっちにしても恥ずかしいのだ。しいねちゃん、絶体絶命である。いつまでもぐずぐずしていると変に勘ぐられかねない。しいねちゃんはしぶしぶローブを膝のあたりまでまくり上げて中途半端な格好でリーヤの肩にまたがった。
「しいねちゃん、落ちちゃいそうだぞ、もっとちゃんと乗れよォ」
リーヤは情け容赦なくしいねちゃんのあらわになった脚を前に引っ張る。それにつられてローブが上の方までめくれてゆく。しいねちゃんは片手でリーヤの頭にしがみ付きながら、もう一方の手でローブのすそを必死になって下向きに押さえる。本当にリーヤに他意はなかったのだろうか? どうもリーヤはしいねちゃんのローブの中を狙っているようだったから、これもやはり策略……? しいねちゃんは必死で無理な姿勢を続けながらパニックになった頭でそんなことを考えていた……
(by ウサギの時計 97/10/08)
テクニカルノート
今回のCGでは、今までの絵に較べてちょっと感じが違うと思われた方は鋭い。実は今回は、よりアニメっぽい感じを出すために、輪郭線をかなり細くし、さらにその輪郭線を黒ではなく濃い茶色、いわゆる「色トレス線」というものにしてみた。色トレスは輪郭が目立ち勝ちなアニメ絵を少しでもリアルに見せるためのテクニックだが、当然CGにも応用できるわけだ。……なんてことで。
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