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(新建ちばNo.176より抜粋)

住まいづくり研究会主催

第1回「千葉のものづくりを訪ねる」タタミ工場見学

                        見学地 : 君津市末吉 在原産業(有)

 ゴールデンウィークぼけも覚めやらぬ5月8日、集合場所である久留里線小櫃駅は単線の駅ならではののんびりとした雰囲気。今年の住まいづくり研究会は、「地場産業を知ろう」ということで、建築に係わる産業を中心にものづくりの現場を訪ねます。今回の第1回は、生協の畳を扱っている在原産業(有)さんのところへお邪魔し、代表の在原敏雄氏にお話を伺うことができました。

 在原産業さんは、畳表をつける前の畳床の生産をされています。「化学物質の含まれる防虫紙を使わないで欲しい」という声から、防虫紙なしのものを作ってみたが、実際に使った人から虫が出ると苦情が出た。人にかみつく虫はツメダニという外国の虫。海外から藁を輸入すると虫や病気がついてくるし、品質もあまり良くないので、藁は国産を使う。基本的には防虫紙は畳の裏と中に二枚入れるが、化学物質を極力含まないものを頼まれた場合には、最終的に100℃で三時間半の熱乾燥処理をして出す。ただし、処理には一枚につき500円かかる。「防虫タタミで化学物質を含まないのをつくれ」とは言われるが、普通の畳屋さんからは500円/枚が出ない。熱乾燥処理は個別に頼まれたときだけ、とのこと。

←熱乾燥処理機イソバーン 基本的には藁を乾燥させるための釜。


 畳業界の主流は輸入の藁。10円/kgくらい違ったそうです。安く出ている畳床は輸入のものを使っているが、虫が出やすい。在原産業さんでは福島県や千葉県の稲藁を使って生産されているそうです。
 畳床には三種類あります。一つはスタイロフォームをインシュレーションボードで挟んだ、藁を使っていない「建材床」。市場の70%はコレなのだそうです。これって畳じゃないんじゃ…?でも、自分の住んでいるアパートの畳も多分この建材床。建材床は縫い目が大きくなにしろ軽い。二番目に出回っているのが「スタイロ畳」 中心部分はスタイロフォームで外側が藁。藁のみを使用した本当の畳床はなんと市場の5%とのこと。本物の畳の上で昼寝したい…。

←建材床=ボード+スタイロ+ボード。


 最近では解体業者が古い畳の処分に困って持ってくるので、機械で切って細かくほぐして、中部分に使っているそうです。藁を縫っている糸は化繊なので、自然に戻らない。「糸に麻糸を使え」という声もあるが、今使っている機械にきちんとかかるか不安なのでできない。不良品を出すわけにはいかないし、取り替える手間もお金もないし。

←タタミ製造機


 最終的に層になって出来上がる藁の動きが合理的で興味深い…。ごっつい機械だが、タタミの生産者の手による工夫が随所に見られる。


 時代が少量多品種の時代。いろいろと注文をつけられる。正直儲けは出ない。趣味のようなもの。昔は君津に30軒あった畳工場も、今では4,5軒。でも買ってくれる人がいるからには続けようと思う。

 今回見学させていただいて、ものづくりの現場だからこそのこだわりと工夫を感じました。「知ってもらうことがいいことだから」という代表の在原さん、貴重なお話をありがとうございました。
(足立)

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