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第24回全国研究集会(倉敷)に参加して
(新建ちばNo.179より抜粋)
 
2004年11月22日から22日の3日間、倉敷で行われた全国研究集会に参加してきました。これは新建会員が日常の業務や活動の成果を報告し合う貴重な経験交流の場で、全国大会と交互に隔年で行われる重要な企画です。たくさんのひとに参加してほしかったのですが、千葉からは私と鎌田さん稗田さんの3人の参加となりました。
 


●22日 「まちなみ見学と古民家再生工房
                −楢村徹設計室訪問」
観光コースからちょっと外れた界隈を散策
 
    午後の集合時間より大分早く着いて、倉敷の伝統的建築物保存地区をひとまわり。それから大原美術館をじっくり鑑賞。展示物の充実ぶりには驚かされました。後期印象派などずらりと揃っていて、民芸運動、棟方志功、最後は蔵を改造した展示館に中国古代美術。泣けてきましたね。時間にせまられ後ろ髪ひかれる思いで集合場所へ。
 この見学は内心かなり期待していました。地元会員により、観光コースから外れた見所をゆっくり見て歩きました。保存地区のなかでも今も生産的な活動を続けている界隈や、建築家楢村氏の手がけた再生民家などをたどっていくうち楢村徹設計室に到着。古民家再生工房とは、岡山に残る民家を現代に蘇らせる活動に取り組む6人の地元建築家のグループ名で、楢村氏はその一人。事務所としている建物「創想舎」は老舗の呉服屋「はしまや」の納屋を改造したもの。2階に設計事務所、1階はオープンサロンとしてコンサートや会合場所としても開放して、町と設計事務所を近づける試みをしているとのこと。デザイナーとして、まちづくりにどう関わるか、ひとつのあり方を体現しているように感じました。倉敷で最も手入れの行き届いた町屋であり、今も昔のように商売をしている「はしまや」の見学の後、交流会は江戸期の町屋を改装した名店「つね家」。魅力あふれる再生建築群とおいしいお酒を申し訳ないほど楽しませていただきました。

 
 
●23日 全体会と分科会初日民家再生によるレストラン。楢村氏の設計。
 
 丸谷さんの記念講演のあと、研究集会は昨年相次いだ災害の報告から始まりました。福井水害、兵庫、京都など台風23号被害、中越地震、さらに阪神震災10年に関連して各地の会員から被害状況や復興支援の報告がありました。
 全体会は「住み続けられる住まいとまちを守り育てよう」。あまりに広大なテーマで結局、「住宅」「施設づくり」「まちづくり」「職能」「デザイン」の各分科会の代表者が顔見世興行的に問題提起したというところでしょうか。千葉の鎌田さんが、現在の住宅政策について取り上げ、建替えやリフォームを促して、劣悪な住環境の改善を進めることを提案していることに一定の評価をしながらも、住宅産業の仕事づくりの側面が強いことを指摘しました。他には兵庫の黒田さんが公共サービスの民営化で公共施設が消えかねない状況にあることを強く訴えていたのが強く印象に残りました。その後はいつものように交流会。よせばいいのにまた飲んでしまった。

 
 
●24日 住まい分科会楢村事務所 商家の納屋を改造
 
 住まい分科会は「住まいづくりは家族づくり」「集まって住む」「地元の木で住まいをつくる」の3つの小テーマ分科会からひとりづつ報告がされました。私は「家族づくり」分科会から「高齢者や障害者のための住宅改造事例」を、京都もえぎ設計の田村さんは「地元の木」から「京・杉の家・座」の取り組みと「京都・森と住まい百年の会」の運動、大阪の伴さんが「集まって住むさまざまな暮らし」で市街地に住むコーポラティブハウスのほかそれぞれユニークに集まって住む6つの事例を紹介しました。伴さんの報告はなかなか面白いもので、「建築はつくるものでなくできるもの」「集まって住む住み方から権力を抜き取るのがコーポラティブ」などなど興味尽きない語録が続きました。 
 
 
●小分科会丸谷氏の記念講演
 
 午後は分散して、私は「家族づくり」の分科会です。
京都もえぎの成宮さん「住み手の思いに寄り添うこと」。「もえぎ」らしい表題。難しい施主に戸惑う設計者の本音が素直に聞けてなにか良かったです。
山本厚生さんはその場で一緒につくっていくという設計の進め方−これ私にはとてもできないけれど−や、設計をわかりやすく単純な形にしていくという話が心に残りました。
東京の淺川さんは設計協同フォーラムから入った仕事で「まちかどの小住宅」と題してカボチャ束で屋根をかけた家。すっきりした気持ちのよさそうな空間が広がっていました。
岡山の横田さんは「子供を育む家づくり」と題していくつかの子育て中家族の家づくりを紹介してくれました。ご自身も子育て時代のママさん設計者。施主も彼女にすっかり乗せられてしまうのではないかしらと思えるほどお話も住宅も明快。とてもうらやましいパーソナリティーの持ち主だと思いました。

 

 
 以上私が触れることのできた部分を紹介いたしました。最後に稗田さんは多忙な中、「地元の木で住まいをつくる」分科会に「さんむフォレストの運動」の報告をするため日帰りの参加をしてくれました。たいへん反響も大きかったようです。ご苦労様でした。
 
(報告 加瀬澤文芳)

 

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