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農村はゴミ捨て場ではない

 千葉県で活動している自然保護関係の市民団体の一つである「残土・産廃ネットワーク千葉」が、県内の残土処分場、産業廃棄物処分場や不法投棄の実態を調べて公表している。その事務局を引き受けている方のところには不動産業者とおぼしき者から脅迫めいた電話がかかってくるという。廃棄物処分場などが所有地の近くにあることがわかると地価に影響するからである。法律上、残土は廃棄物ではないが、実際にはこれを悪用して残土のなかに廃棄物を混ぜて捨てることが多く、これに起因する土壌や地下水の汚染が各地で多発している。
 市町村によってはデータを表に出さないところもあるし、不法投棄の場所を網羅するのは難しいから、県全体の実態を正確に把握することはできないが、ここで明らかにされたものだけでも大変な数にのぼる。これを集計、分析してみたところ、県下59市町村で約650カ所に及んでいる。最も密度が高いのは成田や市原であり、10km四方に約100カ所、1km2あたり1カ所の処分場等が存在する。大部分は農村地帯であるが、必ずしも房総の山のなかなどの交通不便なところではなく、都市近郊の市街化調整区域などにより多く分布している。その一方の理由は、東京方面から高速道路を使って運び込むルートが便利であること、もう一方の理由は、農村の地主のなかに農地や山林を埋め立てて宅地化することを望むものがいることによると思われる。
 農業が割に合わない産業になり始めてから既に久しいが、外国からの農産物輸入が増大しつつある昨今、その傾向は更に強まっている。農地や山林から生活を支え得る収入が得られるなら、自分の土地をゴミ捨て場に提供するようなことはしないであろう。
国全体で1年間に使われる資源は、輸入資源が約7億トン、国内資源が13億トンだが、輸出される資源は1億トン、大気中に放出される分が4億トン、廃棄物が5億トンだという。景気が悪い現在でもこの数字だから、経済が活発になったら廃棄物の量は更に増えるだろう。いくらリサイクルが進んでも、リサイクルのためにまた膨大なエネルギーを使わなければならない。
 これからの社会がめざすべきなのは、大量生産、大量消費のさらなる拡大ではなく、本当に必要なものを長く大切に使う生活スタイルを基本とすることではないだろうか。人々を競争に駆り立て、貧しいものを更に貧しく、富めるものを更に富ますグローバリゼーションではなく、贅沢はできなくても地道に働けば安定した生活が保証される堅実な社会をつくらなければならない。それが、目標を見失った現代社会が真の活力を生み出す道に相違ない。
(三国政勝)

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