ライトツアー
スライド鑑賞会 報告

 講師は、会員の鎌田一夫氏。彼は長く住都公団で集合住宅の計画や設計に携わっていた。8年前の三沢浩氏のライトツアーでは、ご一緒した。現在はある研究所の顧問。近代建築の建築論と団地住宅を中心とした内外の建築にも造詣が深い。
 4月16日(土)の夕方、加瀬澤さんの設計になる西千葉の登戸会館にて、軽食とアルコールを交えてのリラックスした鑑賞会があった。参加者は新建のメンバーを中心に17名。

◇様々な建築人の参加
 フランク・ロイド・ライト(FLライト)の学習会というと、集まってくる仲間は、みんな人一倍建築に関心をもち、人間味溢れ地域文化を反映した建築空間を生み出したいと情熱をもっている人が多い。その意味で今回の参加者もそのような指向をもった人が多かったように思う。中には、ライトオタクとでも言うべきライトの建築のプロも参加した。さすがにライトは人気がある。
◇西海岸へのライトツアー
 8年前、私も今回の講師の鎌田さん達とシカゴからニューヨークまでのライトツアーに参加したが、今回は西海岸エリアの建築ツアー。
☆ロサンゼルス☆
★いきなりウオルト・ディズニー・コンサートホール(2003フランク・ゲーリー)の作品。ステンレスを曲げ加工した工業製品のような建築。この建築の雨仕舞のディテールについて議論になった。ステンレスの継ぎ目は簡単にフック上のものを重ね合わせたもの。雨の少ない地方ならでは。
★エニス邸(1923)、★バンズドール邸(1918)、★ミラード邸(1922)、いずれもFLライト
 エニス邸とバンズドール邸はハリウッド地区、ミラード邸はパサディナ地区にあり、いずれも組石造で各ブロックにはマヤを意識した装飾を施している。この中で、バンズドール邸は別名「立ち葵の家」といわれている。

☆ラ・ホーヤ☆
★ソーク研究所(1965ルイス・カーン)
ルイス・カーン設計で1965年に完成した生物学研究所。カリフォルニア州ラ・ホーヤの丘の上に建つ。この研究所は、太平洋に向かって急勾配で落ちていくがけの突端にある。最初は実験研究施設、居住施設、訪問者用宿泊施設の3つの建築群が計画されたが、この内研究棟のみが実際に建設された。この研究棟は、建築空間をささえる設備階が用意されており質の高い空間が確保されている。

☆サンフランシスコ☆
★モリス商会(1948 FLライト)
★マリン郡庁舎(1959〜69 FLライト)
★ハンナ邸(1937 FLライト)
☆フェニックス☆
★タリアセン・ウエスト(1938〜FLライト)
これは、タリアセン・フェローシップの冬の家として1937年に設計されたもので、アリゾナの砂漠の素材を建築にどう生かすかという命題に対して、さまざまな有機的な試みがなされたライトのプレーリー建築を代表する傑作である。鎌田さんの説明によると、市街地がこの建築の間近まで押し寄せている。★デビット・ライト邸★ハンナ邸

◇ライト建築は建築を志す人々の絆
 日本では、旧帝国ホテル、自由学園明日館、ヨドコウ迎賓館などの作品があるが、一般にはわかりにくいけれど、天才ライトの建築は建築を志す人々の絆となっている。 以上 (N)

■参加者の感想
 以前参加させて頂いた「三沢浩連続セミナー」以来、久しぶりにお邪魔しました。実際に見てきた、今現在のライトの建築、加えて周辺の建築も見られるという事で、楽しみに参加させて頂きました。
カリフォルニア、ラ・ホーヤ、サンフランシスコ、フィニックス…と、流れるスライドを見ながら、西海岸の晴天の空の下、話し手の鎌田氏をガイドに日常から抜け出してちょっと旅に出たような感覚で、アルコールも手伝ってか、とても気持ちよい時間を楽しませていただきました。
ライトの建築だけではなく、じゃあ、その土地に建てられた他の様々な建築物はどういったものなのか… そういった土地性のようなもの、また、スライドの中では、ここ数年でできたような建築物も登場し、その土地性という概念に、時間軸を掛け合わせてみたり… 今度はギュッと焦点を絞って、ライト個人の生涯を想像しながら考えてみたり… などなど、自分の中で色々と思いを巡らせながら見ていました。
その中で、スライドの流れに沿った土地別の建築物リストやアメリカ建築史の資料もまた世界に入りこむには効果的で助けられました。
あれこれと考えながら、時間がたつのがあっという間に感じたのは、きっとその世界に浸り、楽しむことができたからなのでは。
有意義な時間を過ごさせていただきました。どうもありがとうございました。(O)






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