<きくちゆみさんによる解説>ニューヨーク州北部にある先住民の連合体「イロコイ」連邦は1000年近く母系制の民主社会を営んできて、18世紀の合州国建国
で 指南役を務め、いまでもアメリカ国内の準独立国です。 [イロコイ連邦については、J・ウェザーフォード『アメリカ先住民の貢献』(パピス)、P・アンダーウッド+星川『小さな国の大いなる知恵』(翔泳社)など参照。「モカシン」は柔らかい動物の皮でつくる履きやすい靴。
「平和のモカシン」
モカシンづくりの人びと、戦争を止める人びとへ
世界中の女たちによる共同行動の呼びかけ
私たちには戦争をやめさせる力がある! 「男たちが戦争に行くには、その前に女たちがモカシンをつくってやらなければいけない」――私の先祖の伝統では、戦争に行く男たちのために女たちがモカシンをつくる習わしでした。女たちが戦争を望まないときは、モカシンをつくりませんでした。
私の先祖はホーデノショーニー連邦に属していました。ヨーロッパ人はそれをイロコイ6部族連合と呼びました。遠い昔、一族がむごたらしい戦争と暴力に苦しんでいたとき、ピースメーカーと呼ばれる改革者が「大いなる平和の法」をもたらしてくれました。アメリカ上院は、私たちの平和の法が合州国憲法の手本になったことを認めています1987年12月2日/両院同一決議76号)。ひるがえって、合州国憲法は国連憲章のモデルになりました。私たちの平和の法は近代国際法の基盤なのです。アメリカ人は私たちの法や慣行を取り入れたものの、それらをよく理解していませんでした。
私たちの先祖は、民衆協議会における話し合いで共同体の紛争を解決することにより、すべての男女の自主独立を認めました。私たちの伝統では、あらゆる討議にさいして次の3点を心にとめることになっています。
1.平和――平和はあらゆる代償を払って守るべきこと。
2.道義――7世代後の必要を考慮に入れ、道徳的に正しい決定をすべきこと。
3.力――人びとの力は、すべての男女の平等な自主独立を含めて維持されるべきこと。
国と国とのあいだの紛争も、外交努力と合意によって解決されました。戦争、ないし武力の行使は、最後の最後の手段でした。またそうなった場合にも、敵の女性と子どもには手を出さない定めでした。
私たちの先祖はこれまでずっと、好き嫌いはさておき、他の国々の異なる習慣や法律や暮らしぶりを尊重してきました。互いに共存するための合意を見出す努力をした
のです。ですから、私たちは現在の紛争についても身を引いて、関与しませんでした。けれども、もう事態は傍観していられる一線を超えたと思います。罪もない生命や母なる大地が危険にさらされようとしています。この地球の女性として、また世話役として、私たちは声を上げる決意をしました。
私たちの先祖から伝わる法によれば、北米の大地は女性たちに授けられたものです。戦争か平和かという重大な決定には、人間の半分をなす女性、生命を産む者であり、大地を培(つちか)う者である女性の関与が不可欠でした。
私たちはいま、不要な戦争を行なおうとしています。私たちには、自分たちの力を善きことのために使う義務があります。私たちは全人類に、この大切な真実を思い出
してもらおうと決意しました。戦争は女たちの支持なしには起こりえません。私たちは世界中の女たちに、一歩前へ踏み出し、すべての男たち、あらゆる人間の産みの親として、地球とそこに生きるすべてのものたちの世話役として、しかるべき責任を果たすことを呼びかけます。
私たち女性は出産の痛みと苦しみを知っています。わが子が死ねば深い喪失感を抱きます。これを理解するからこそ、私たちは生命の破壊をストップするために行動しないわけにいかないのです。子どもたちを苦しませてはなりません。私たち自身の子どもはもちろん、私たちと意見の合わない人の子どもも同じです。私たちは、あらゆる個人がもつ、この地球上に生きる神聖にして冒すべからざる権利を尊重します。
全世界の女たち、そして私たちを支えてくれる男たちに呼びかけます。前へ踏み出し、この狂気を止めましょう。
イラクへの開戦決定がなされれば、何千人もの罪もない男女と子どもたちに死をもたらすでしょう。この戦争は、国民の意見も聞かず、女性の意見も聞かずに、ほぼ男たちだけで決めたことです。それらの男たちにも祖母があり、母があり、妻があ
り、ガールフレンドがあり、愛人があり、姉妹があり、娘があり、姪があり、孫娘があり、乳母があるはずです。
私たちは、そういう女たち全員に、男たちへの圧力をかけるよう呼びかけます。
ブッシュ大統領やパウエル国務長官、ラムズフェルド国防長官、ブレア首相(イギ
リス)、フセイン大統領、クレティエン首相(カナダ)、シャロン首相(イスラエル)、パレスチナの人も北朝鮮の人も含め、いま世界を破壊しようとしている男たちに圧力をかけるのです。女たちよ、自分の身近な男たちを正気に戻しなさい!
女たちよ、自分の力を思い出しなさい。自分の責任を思い出しなさい。
だれもが自分なりの力をもっています。私たちはみな、自分のもつ力を善きことのために使わなければなりません。
私たちは戦争を止めなければなりません。私たちは平和を守らなければなりません。
私たちはモカシンをしまっておかなくてはなりません。
カーンティネタ・ホーン(Kahn-Tineta Horn)
モホーク族の母にして祖母
[原注]このメッセージは、ホーデノショーニー(イロコイ連邦の自称)モホーク族の女性長老から発せられました。彼女の言葉は真実で善きものです。私はこのような平和な一族の血を引くことを誇りに思います。このメッセージは私にメールで届きましたが、どんどん転送してください。この賢女のすべての祈りと、一族のための働きに感謝します。
ホワイト・アウル/亀の島にて
whiteowl@turtle-island.org
(翻訳:星川 淳)
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