マキシーン・ジェントルから,トニー・ブレア首相への手紙

トニー・ブレア総理大臣さま

私はマキシーン・ジェントルといいます。14歳です。2004年6月28日にイラクでの戦争で死亡したゴードン・ジェントル歩兵連隊兵士の妹です。私が考えていること,感じていることを知っていただきたいと思い,手紙を書いています。

私が感じていることとは,あなたは職務にかけてはまったくダメだと私は考えているということです。あなたは英国の一般大衆のことなど気にかけていない。軍隊のことも,実際に誰のことも気にかけていません。

私の兄は19歳で死にました。何のために? 石油と金をめぐる戦争,それがこの戦争のすべてだと私は考えています。「大量破壊」兵器なんていうものは,なかった。もしあったならば,サダム・フセインは戦争が始まったときにその兵器を使っていたでしょう。

総理はイラクから私たちの兵士たち全員を撤退させるべきだと私は考えています。結局これは私たちの戦争ではありません。アメリカの戦争です。ならばどうして私たち英国人が巻き込まれなければならなかったのでしょう? 総理はジョージ・ブッシュの機嫌を損ねたくなかっただけなのでしょう。

私にとって,兄は世界でした。兄のことを私は誇らしく思い尊敬していました。自分で何かをした人だったからです。兄は,総理と同様に,広く知られた人でした。でも兄は,総理とは違って,誰にも好かれ愛されていました。私はあなたのことをまったく尊敬していません。私の知っている多くの人たちも同様です。(だから誰にも好かれた兄とあなたは違うのです。)

ゴードンは4月に兵役検査に合格したところでした。それでも5月までには,あなたは兄やその他多くの人々を戦闘地域に送っていた。

奇妙だと思います。配管工とか電気技師になるためには3年とか4年の訓練が必要なのに,兵士となるためには,誰かを殺すことを習得するためには,わずか6ヶ月の訓練をすればいいだけだなんて! 総理がイラクに送り出した人々は,まだ若いのです。この先の人生が長い人々です。ゴードンもそうでしたが。

私の家族は今でも非常に深く悲しんでいます。私もそうです。総理にとっては兄はいくらでもいる人間のひとりだった。ゴードンがイラクに行くとわかった瞬間から,ゴードンがイラク人によって殺されたとわかったその瞬間まで,私たちはゴードンの身を案じていました。

私たちはとても深く悲しんでいます。けれども私はゴードンの死を,路上爆弾を作ったイラク人たちだけのせいにはしません。あなたのせいでもある。なぜなら,私たちが戦争を始めなければならないということでジョージ・ブッシュと合意し,私たち(英国の)兵士をイラクに送ったことはそもそもあなたの間違いだったのですから。そして私たちは戦争を始めなければならないわけではなかった!

今はみながとても深く悲しんでいると書きましたが,あなたにはそのことはわからないでしょう。あなたの息子さんたちはみな夜には快適なベッドで安らいでいるのですから。今このときにも,息子をイラクにやられていて,愛する息子が帰ってくるのか,それとも次に殺される人物となってしまうのかと心配して,夜も眠れない母親や父親がいるのに。

私たちがどう感じているか,総理にはおわかりにならないでしょう。あなたは夜には奥さまや息子さんと一緒に家にいて,息子さんたちの成長を見守っている。でも私たちは,ゴードンがこの先どうなったかを,決して知ることがないのです。

あなたにとって,あなたが下す決断によって人々の生活/人生をめちゃくちゃにしながらお金と権力を持ってそこに座っていることに,問題はないのですね。私があなたについてどう感じているかを知られても私はかまわない。あなたが気にかけることと言えば,あなたに利することだけ。あなたと,あなたの新しい「親友」のジョージ・ブッシュが気にかけているのは,イラクの石油のことだけ。

兄は深夜に死にました。そして,あなたとジョージ・ブッシュがその午後にテレビに生で出てイラクに主権を移譲したとき,おふたりとも午後じゅうずっと微笑んで,幸せ大家族みたいに振る舞っていた。でもおふたりとも,その日の午前の早い時間にひとりの英軍兵士が死亡していたことを,十二分に知っていた。

あなたが何をしようとどう言おうと,私の気持ちは変わりません。私が心の奥でひどく苦しんでいるという事実も変わりません。私は泣きながら眠りにつくことがほとんどです。ゴードンは逝ってしまった,もう絶対に帰ってくることはないのだから。

正直なところ,あなたとは実際にお会いしてこういうことを伝えたかったです。でももしあなたに会っても,私はあなたと握手はしません。これが私の,総理とジョージ・ブッシュに対する個人的な感情です。それでもジョージ・ブッシュへの敬意より,総理への敬意はさらに低い。あなたは英国の総理大臣であり,私は英国人です。私は時々英国人であることを恥ずかしく思います。何しろあなたのような人が総理大臣を務めているのですから。

どうかこの手紙を読んで満たされていただけますよう。私がこれを書いて満たされたように。

敬具

マキシーン・ジェントル

次の手紙はマキシーン・ジェントル(14)から英国首相(一部ではトニー・スカンクと呼ばれて軽蔑されている)
に宛てた切々とした訴えだ。大人が百万遍の弁明を繰り返そうとも、ジュニチロ・スカンクが軽々しく、「人道支
援」を繰り返そうとも、この手紙に答えることはむずかしいだろう。どうか中学校、いや小学校高学年の先生方
にこの手紙を教材として使ってください。(2004年8月29日 しまおか こういち)
元ネタは下記のHPにあります。もっとも英語の原文はindependent pews portforlioから買わなければ入手で
きない。
http://ch.kitaguni.tv/u/1023/%bb%fe%bb%f6%a1%f5%bc%d2%b2%f1%cc%e4%c2%ea/0000114473.html