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「テニス難民」を考える。

2000年7月2日(日)
世田谷・砧区民会館

【司会】  ……会場をお見受けしましたところ、ほとんどテニスプレーヤーの方でいらっしゃるようですけれども、外は良いお天気でございます。皆様さぞかしテニスをなさりたかったところだと思いますが、こんなに大勢の方々、この会場に足を運んでくださいまして、本当にありがとうございました。

 本日のテーマ「テニス難民」、この言葉は、一般の方々にはちょっと耳新しい言葉かもしれませんが、テニスのクラブプレーヤーにとりましては、大変身近な、そして切実な響きを持っています。国を追われ、住む家を失った難民同様、ついの住みかと信じていた自分たちのテニスクラブが、突然なくなってしまうと聞いたとき、プレーヤーたちは、その戸惑いや悲しみをどこに訴えたらよいのでしょうか。

 本日の司会進行、成城グリーンプラザテニスクラブの高橋由紀子でございます。ご協力、よろしくお願い申し上げます(拍手)。早速シンポジウムに入りたいと思います。初めに、この会が持たれることになりました経緯など、「成城グリーンプラザを守る会」の内海・代表幹事よりご説明申し上げます。

クラブ閉鎖を通告された「半難民」が開催

【内海】  ただいまご紹介にあずかりました内海でございます。本日は、パネリストの皆様、並びに会場にご参加いただきました皆様も、休日で大変にお忙しいところ、このように大勢参加いただきまして、誠にありがとうございます。心からお礼申し上げます。

 本日のシンポジウムのテーマは、ただいま高橋から紹介しましたとおり、「テニス難民を考える」ということですが、私ども成城グリーンプラザの会員は、現在、「難民」に片足を突っ込んだ状態にあります。と申しますのは、昨年10月、経営母体のサッポロスポーツプラザより、今年10月末をもって成城グリーンプラザを閉鎖すると。閉鎖の理由としましては、平成6(1994)年から赤字経営が続いており、一昨年で累積が1億8,000万、そして、将来においてもこれを解消するめどが立たない、というのが、閉鎖の大きな理由でございました。

 当時、750名の会員一同、まさに青天の霹靂(へきれき)でこれを受けとめたわけでございます。早速、スポーツプラザ社に対して、また親会社のサッポロビール社に対して、いろいろ嘆願なり懇談を行ったわけですが、結局、聞き入れられず、現在は弁護士先生方に中に入っていただきまして、サッポロとの交渉を行っている段階です。そういうわけで、本日は、「半難民」という形で、このシンポジウムの企画をさせていただきました。

都会周辺でテニスが出来なくなる不安深刻

 ところで、難民の実態ですが、私ども、この東京周辺でいろいろできる限りに調べてみました。平成6年から本年に至るまで、21のクラブが閉鎖になっています。コート数で200、会員が1面50人として、約1万人の会員が会員資格を喪失、これを「テニス難民」と呼んでいるわけです。

 傾向としては、平成6年から8年までの間は、どちらかというと、個人のいわゆるオーナーが、相続税の支払いのためにクラブを閉鎖されて、後ほど売却されるというような、個人的な色彩が強かったわけですが、この2、3年は、大型の、いわゆる企業系の大型クラブの閉鎖が目立っています。日本鋼管の京浜テニスクラブ、それから、講談社のミタカファミリー、東武鉄道の北春日部テニスクラブとか、また、本日もパネリストとしてご出席いただいております、東急不動産の多摩川園ラケットクラブとかというように、大企業系のクラブが閉鎖に追い込まれています。

 閉鎖の理由や、その原因、背景につきましては、パネリストの皆様方のお話を伺いますが、我々調べてみまして、この平成12年に入りましても、実に5つのクラブが閉鎖になっています。毎月、約1つの割合でテニスクラブがつぶれているということで、まさに都会周辺では、テニスができなくなるのではないかという、会員一同、ショックを感じているわけでございます。

 それでは、次に、世間一般ではこういうテニスクラブの閉鎖をどう受けとめているかということですが、これは私の偏見ですが、必ずしも、世間一般ではテニスクラブの会員に同情的ではないのが現状じゃないかと思います。何かテニスというと、限られた一部の方のスポーツというような感覚で受けとめられているようでして、本当にそうかな、ということで、いろいろ調べてみましたら、これは、スポーツ白書によるわけですが、テニス人口というのは最も多く、日本体育協会に競技人口として届け出がある、ちょっと以前の数字ですが、テニス人口は150万人、次いで柔道の130万人、剣道が125万、野球に至りましては110万というような数字が出ています。こういった、庶民的なスポーツが、なぜ世間でそのように受けとめられていないのかということにつきまして、いろいろ、今後世論を味方にしてテニスクラブを存続していこうというときに、大事な一つの問題ではないかと思います。

介護費抑制効果もたらす息の長いスポーツ

 テニス人口がこのように多いのは、やはり男女の差はなく、このスポーツに親しめる、2番目が、やはり年をとってからもできる息の長いスポーツであるというようなことが言われます。

 先日、スポーツ熱に年齢差なしと、年齢の壁がないというようなオーストラリアの紹介記事を目にしました。オーストラリアは、ご承知のとおり、スポーツに大変に熱心な国でございますが、政府がいろいろ後押しをしています。とりわけ、高齢者に対しての施策を十分にやっており、その効果が、1993年から98年にわたる5年間で、障害者率、これは、何らかの形で医療や介護にお世話になっている率でございますが、この障害者率が、4%、4ポイント下げている、金額的に400億円の効果をもたらした、というような記事を目にしたことがございます。

 我が国でこの65歳以上を見ますと、3,400万人が厚生白書のデータです。そして、障害者率としては16%、人口500万人の方々が、何らかの形で医療費、あるいは介護費の世話になっている。もし仮に、1%でもこれを抑制することができればと考えるわけですが、大事なことは、今テニスをやっている人間が、この500万人の中に入っていないということでございまして、この認識は、どうも日本は、きちっとしていないではないかと感じるわけでございます。

かけがえない庶民スポーツのクラブライフ

 テニスクラブが、いろいろつぶれてまいりますが、1つだけ、いわゆるテニスクラブの事業主と我々会員の間で、どうしても基本的な考え方の差が出ております。それは、「クラブライフ」ということです。あえて「ライフ」という言葉を使わせていただきましたのは、生活時間で、私どもの場合ですが、大体15%から20%、クラブで生活をするということでございます。ゴルフクラブやいろいろその他のクラブに比べまして、テニスクラブの場合は、非常に地域に密着した、いわゆる近隣の会員の方が多いせいか、そういうことでは大変に親睦の度合いが強いということから、私どものグリーンプラザの場合ですが、26年間に培われてきたこういう雰囲気というのが大事である。個人にとって、これはかけがえのない大事な価値である、これを代替地に求めても、大変難しい問題である、というふうに判断するわけですが、一方、事業主のほうは、これは個人的な問題である、あるいはライフラインに直接関係していない、というような一言で済まされるのが落ちでございます。

 この辺の事情につきましては、これからのパネルディスカッションでいろいろ議論していただきまして、それぞれに方向を見いだしていただいたならと思っています。

 今日は、そういうことでテニスクラブの閉鎖で、被る会員の被害はどんなものかということが1つ、それから、そういうクラブの閉鎖を回避できる方法はないのか、あるいは法的にどういう裏づけがあるのか、あるいは事業主も我々会員も、今後、関係団体や関係業者に、どう訴えていったらいいのか、第一線でご活躍のパネリストの皆様や、テニスの愛好の皆様方、会場にお集まりの皆様方にご意見をいただきまして、このシンポジウムを有意義にしたいと思っております。よろしくお願いいたします(拍手)。

【司会】  基調報告、内海・代表幹事でございました。この会が持たれた経緯など、皆様、ご理解いただけたことと思います。この後は、早速ですが、パネル討論会に入りたいと思います。ごらんのとおり、パネリストの方々、各界で大変ご活躍中の方々ばかりです。今日は、大変ご多用中だったかと思いますが、このシンポジウムのためにご協力をいただきまして、本当にありがとうございました。それでは、ご紹介いたしましょう。皆様から向かって右側から、お話くださる順番にお座りいただいています。

 まず、元多摩川園ラケットクラブの会員、水谷茂樹さん(拍手)。ラケットクラブ創設以来の会員でいらっしゃいました。多摩川園ラケットクラブの閉鎖問題は、新聞や雑誌などで大きく取り上げられましたので、もうご存じの方も多いと思いますが、その閉鎖時に、水谷さんはメンバー会の副会長として、会社側との交渉に何回も当たられました。クラブ閉鎖の時期とそれまでの経緯、そして現在別の形でクラブが続いていると伺っておりますが、その辺の状況などもご説明していただきたいと思います。

 続きまして、成城グリーンプラザテニスクラブ会員で、俳優の峰岸徹さんです(拍手)。会員歴16年、奥様も大変熱心な会員プレーヤーでいらっしゃいます。成城グリーンプラザは、ご存じのように、この10月で閉鎖と通告されておりますので、会員たちは、まさに、ただいま「難民予備軍」といった状況です。峰岸さんには、そのあたりのご心境、そしてご自宅はテニスクラブに隣接していることもありまして、コートの跡地利用問題ですね、環境面などから大変関心を寄せていらっしゃいます。

 弁護士の吉田雅子さん(拍手)。数々のテニスクラブ閉鎖問題を手がけ、大変経験豊かな弁護士さんでいらっしゃいます。今日はいろいろ事例を挙げながら、法律面などからもご説明をいただきたいと思います。また、自らもテニス歴20年、テニス大好き人間ということで、今日は温かいアドバイスがいただけることと思っております。

 続きまして、横浜国立大学教育人間科学部教授の蝶間林(ちょうまばやし)利男さんです(拍手)。蝶間林さんには、ご専門の健康科学の面からお話をいただきたいと思います。ここのところ相次いでおりますテニスクラブの閉鎖問題は、テニスを生涯スポーツとして、健康的に生きていこうとしている人たちにとってどんな影響があるのか、運動生理学上から見た心と体の健康とスポーツの関係などについて、いろいろ教えていただきたいと思います。また、プレーヤーとしてのご意見もお聞かせください。

 元デ杯選手、元デ杯監督の渡辺康二さんです(拍手)。渡辺さんが、日本のトップテニスプレーヤーでいらっしゃることは、もう皆さんよくご存じの通りですが、また、日本テニス協会の役員を歴任なさり、後進の指導に当たるなど、日本のテニス界のためにお力を尽くしておられます。多くのクラブが閉鎖されていくというような現在の状況を、テニス協会の立場、そしてテニス指導者のお立場からどのようにお考えになるか、お話ししていただきたいと思います(拍手)。

 初めに、相次ぐテニスクラブの閉鎖に関しまして、パネリストの皆様、それぞれのお立場から、関連事項をお話ししていただきたいと思います。それでは、水谷さんからよろしくお願いいたします。

期間延長で和解、さらに売却先と延長交渉

【水谷】  私は、元多摩川園ラケットクラブのメンバーの水谷でございます。本日のシンポジウムの責任者であり、私の30年来の友人である南後(なんご)さん(守る会代表幹事の1人)から、今日のシンポジウムに参加するようにという要請を受けました。他のパネラーのそうそうたるお名前を伺いまして、私はその任にあらずと申し上げたんですけれども、多摩川園の件では、あなたも新聞やテレビに出たんだから、全然ビビルことはないと激励されまして、テニス愛好者の1人として、少しでも何かお役に立つことがあるかと思いまして、参加させていただきました。

 多摩川園の件につきましては、既にいろいろお聞き及びと思いますけれども、その結論が出るいきさつはどうであったのか、会員の立場から手短にお話しさせていただきたいと思います。あえて会員の立場からと申しましたのは、会社の立場という全く違う立場がございまして、この利害相反する会員と会社というものが一体になってクラブを運営していかなければならないという、これは日本独特の預託会員制のクラブというクラブ組織に、問題の根源が1つあるんじゃないかと思うわけですが、これについては、後ほどの話にいたしまして、いきさつについて手短にお話ししたいと思います。

 昨年の12月末に、会社から、規約に基づいて3カ月の猶予期間を置いて、3月末にクラブを閉鎖するという通知を受けました。理由は、経済上の赤字運営のためでございます。私どもは、すぐ閉鎖反対委員会というものをつくりまして、会社に話し合いを求めましたが、応じませんので、750名の会員が申立人になりまして、東京地方裁判所に、いわゆる地位保全の仮処分の申請をいたしました。

 私どもは幾つかの理由を挙げまして、このクラブを閉鎖してはならないこと、従前どおりのサービスを継続することを申し立てたわけでございます。この理由は、私たちにとっては、非常に理のある理由だと思ったのでございますが、会社側は、その理由についてすべて反論をいたしました。

 裁判官は、双方から別々に、その理由を何回か聴取し、私どもに申しました。「このような契約を解除するという問題については、一般的には、そこから受ける損害賠償を請求するという裁判が通常です。しかし、皆さんは、損害賠償ではなくて、クラブを継続するということを望んでおられます。クラブを継続するためには3つの方法があるようです。1つは、このクラブを第三者が買い取ってクラブを継続するという方法です。2つ目は、東急不動産が、クラブの規模を縮小して、クラブを継続するという方法です。3つ目は、同じく東急不動産が、クラブの閉鎖期限を延長してしばらく続けるという方法です」ということでした。裁判官がこういうことを言ってくれましたのは、私どもが挙げた、閉鎖してはならない幾つかの理由に、それなりの理があると判断した結果と思っています。

 裁判が進行する中で、東急不動産が、実は1月の下旬にこの施設を第三者に売却してしまっているということがわかりました。3月の初めのことです。裁判官から、「大変ショッキングな事実が判明しました。東急不動産は、実はこのクラブを既に第三者に売却しています。この売却契約は、法的には有効です。したがって、第1と第2の存続方法の可能性は無くなりました。残るのは3番目の、クラブの期間を延長して継続するということだけです。また、会社側は和解によってそれに応ずる用意があると言っております」という話がありました。

 そこで、私どもは2つの選択、つまり仮処分によって期間を延長するか、和解して期間を延長するかという二者択一を迫られることになりました。期間は、どちらも約1年でございます。仮処分のメリットというのは、期限つきにしろ、私たちの主張が認められることでございますから、裁判に勝ったということでございます。一方、デメリットは、会社が閉鎖の条件として言っておりました、入会金の返還が不可能になる可能性がございます。入会金の額は(入会の)時期によって違いますけれども、最低で30万円、最大で200万円でございます。

 さらに、仮処分の場合は、それに続く別の本裁判を申請しない限り、仮処分の期限が終わったときに、クラブは閉鎖されるわけでございます。さらに、仮処分を得るためには、保証金の供託ということが必要になる可能性もございます。さらに、仮処分の期間中のサービスの内容につきましては、仮処分では細かく決めませんので、サービスの質が低下するというおそれもございます。

 一方、和解による延長には、こういうデメリットはございません。和解条件というのを細かく決めまして、その期間、その条件で運営するわけでございます。

 私どもは、最終的に、和解を選択しました。3月末に、それまでの会員契約は解約され、会員は、入会金と保証金をすべて返還を受けたわけです。そして、新たな和解による利用条件で、今年の12月末までのクラブの利用権利をもらいまして、進行しているという状況でございます。

 さらに、私どもは、この施設を買い取ったM社とお話し合いをしました。M社は、なるべく早く、この土地に新しい施設を建てたいという希望を持っております。そこで、私たちの間で1つの妥協案――私ども会員は、この土地の半分を、つまりコート面数14面をこの7月末でその利用権を放棄する。そのかわりに、残る14面のコートを今年の12月末から2年の間利用させる、こういう妥協案ができまして、実は、本日この会が終わった後5時から、私ども多摩川園元ラケットクラブの会員総会がございまして、その席で、この問題をどうするかということを討議することにしております。あと2年間残る可能性というのもひとつ出てきたわけでございます。

会社側の妨害にめげず退会せずに存続運動

 3カ月の裁判期間でございましたけれども、700名の人が団結して行動を続けるということは、なかなかエネルギーの要ることでございます。資金集めとか、会員に対する資料の送付とか、多くのボランティアの方が非常に大きな貢献をなさいました。

 それから、デザインの得意な方がマークをデザインしました。これは、ラケットが涙を流しており、その下に、「We say no」という言葉が入っています。たくさんのステッカーをつくり、いろいろなところに張りました。別の方が、このマークのついたウインドブレーカーを韓国に発注し、10日間で300着つくりました。全部完売いたしました。ちょうど寒い時期でございましたので、私どもはこれを着てプレーしていたわけでございます。

 会社側からは、いろいろな妨害がありましたし、あの手この手で、早く皆さん退会しなさい、しないと入会金が返らなくなりますよと言わんばかりのこともありましたが、3月末まで、ほとんどの方が退会せずに、この運動が継続できたわけです。その点では、私どもは大変そのことを高く評価しておるわけでございます。簡単ですけれども、いきさつは以上のようなことです(拍手)。

【司会】  ありがとうございました。閉鎖時の詳しいご事情をお聞かせいただきました。その間のお仲間の皆様方の、強い結束力を感じとることができました。続きまして、峰岸さん、お願いいたします。

自然環境に溶け込む施設は東京の貴い財産

【峰岸】  峰岸でございます。私は、環境問題から、環境の視点からちょっと物を見てみたいと思います。喜多見と成城をまたがる野川という川がございます。そこの中間に、神明橋という橋がありまして、そこからその川をずっと上っていきますと、四季折々、いろいろなドラマが展開されています。

 今の季節は、梅雨で、雨も多いんですが、雨がやんで何日かたちますと、大きな水たまりが残って、あとはほとんど乾燥状態になり、砂利がむき出しになっているような、そういう野川に変身します。そこで逃げ切れなかったナマズとかコイがいますが、それが、カラスの餌食になったりしている、そういう光景をよく見かけます。その中にも、いろいろな生物が生きています。鳥とか、それに魚、いろいろな動物がそこにいます。今の季節は、カルガモがヒナを育て、よくその親子の姿を見ることができます。

 この間、たまたま野川を散歩していましたら、カルガモの親子を4羽、つまりヒナが3羽ですね、それに親が1羽、ちょうど大きい水たまりから次の水たまりへ行こうと4羽で歩いています。ヒナにしてはとっても遠い距離です。私はちょっと気になり、何とか見届けたいもので、次の水たまりへ行くまで、ずっと一緒につき合って歩いていきました。何とか次の水たまりに着きましたので、私はやっと家に帰ることができたんですが、そういう環境の中で、私はよく子供のころを思い出すような気がします。

 この野川の、この環境のわきにグリーンプラザというスポーツの場がございます。このグリーンプラザにはゴルフ、テニス、それにプールもございます。その周りには、ジョギングをしたり、散歩をしたり、自転車、そのほかリハビリをしたり、ローラースケートをしたりする人もいます。そういう抜群な環境のもとのグリーンプラザです。

このグリーンプラザの周りを、ここ数カ月前に、うちの女房と夕方散歩していたら、1匹のタヌキがいました。そのタヌキは、前足をけがして、不自由な足で歩いていました。しゃがんで呼びましたら、なぜか全然怖がることなく近づいてきましたので、私は近所のパン屋へ行って、ピザを一切れ買ってきて与えました。そうすると、隅のほうへ行って、おいしそうに食べておりました。そういうまだまだ自然の残っている環境とスポーツの施設であるグリーンプラザとは非常によくマッチしています。この環境に、グリーンプラザというところは、うまく溶け込んでいるように私は感じます。人間のつくった物と、また、自然というものが残っている、東京では数少ない場所ではないかと私は感じます。

 そのグリーンプラザが10月に売却され、しかも高層マンション、あるいは建て売りが建つといううわさも聞いております。一度壊したものは、決してもう元には戻りません。こういう環境は、調布、狛江、喜多見、成城はもちろんのこと、大きく言えば、東京の財産じゃないかと私は感じます。何とかこの自然の環境を今のままに近い形で残していただきたいと思うのは私だけじゃないような気がします。

 何日か前に、私の家にフランス人の友人が来まして、近所を一緒に散歩しました。それでその話をしますと、その友達は東京にこんないいところがあったのか。私は信じられない、ということを日本語で言っておりました、私はフランス語はできませんので。

 私の言いたいところは、今の段階ではそういうことです(拍手)。

【司会】  さすが俳優さん。クラブ周辺の自然が目に浮かぶような表現でした。クラブが閉鎖されると、単にクラブ員がプレーをする場を失うというだけでなく、周辺住民の方々にも大きな波紋を呼んでいることがわかります。続きまして、弁護士の吉田さん。たくさんのご依頼をお受けのようですが……。

社会を背景に主張しないと認められぬ権利

【吉田】  このテニスコートの閉鎖問題は、法律論と文化論の2本柱で私は考えるんですが、率直に言って、法律論は難しい。今、水谷さんのほうから説明がありましたように、結局はお金の問題に帰着しちゃうわけですね。要するに会社と会員がクラブ施設を使うという契約をして、それは法律的には継続的供給契約と言いますが、ガスの供給と同じように、継続的にやっていくので、やめるときは、普通の契約解除よりも正当性を要求されるという理論で、結局とどのつまりは、お金の問題に帰着しちゃうと思います。それが常に矛盾するんですね、それで迷う。

 ゴルフ会員権との差についてよく質問されるんですが、ゴルフ会員権の場合は、財産的価値が、まず、入会金も含めて高いですね。それで、流通性がありまして、相場もあります。したがって、市場性があることで財産権という面がかなり重視される。しかし、テニス会員権の場合は、財産権であることは間違いないんですが、まず譲渡を認められているケースはごく少ない。その市場性がないゆえに、つぶされてもあまり今まで声が上がらなかった。財産権を奪うなというのはなかったわけです。

 もともとクラブというのは、今言う、我々が思っているクラブと会社と我々のプレー契約とは別で、自分たちで組織して、自分たちが運営する。テニスの場合は、東京ローンが、自分たちの財産で、自分たちが経営している。日本の場合は、会社がテニス施設を提供して、それを利用していて、本来のクラブとは違うこともまた問題です。

 では、クラブに加入した者のテニスのプレー権というのはどんなものかと、よく聞かれるんですが、テニスの権利なんか無いという人もいるわけですね。ただ権利性というのは、世の中が変わることによって強くなっていく例があるんです。不法行為論で、「他人の権利を侵害したる者はその責めに任ず」責任を負わなきゃならないという法律があるんです。

その中で、古い話で、皆さんはピンとこないかもしれませんけれども、大正7年に雲右衛門の浪花節レコードを複製して売ったのが不法行為にならないという判決があるんですね。理由は、音楽は著作権はある、しかし浪花節は低級音楽で、したがって著作権が無いから不法行為にならない、したがって賠償する必要は無いと、こういう論理なんですね。ところが、そのわずか7年後の大正14年には、「大学湯」というお風呂屋さんの事件で、「大学湯」という暖簾(のれん)をかけたお風呂屋さんが、場所を提供していたんですが、その賃貸借契約が切れた後、勝手に借り手がまた「大学湯」ということで経営し、これを元の経営者が訴えた事件で、暖簾を侵害したと、暖簾も財産権だということで、これは不法行為を認めているんですね。

 ということは、暖簾は、ある意味で形が無いものだけれども、やはり守るべき価値のあるものじゃないかと。社会的には守っていくべきものではないかという背景があったと思われるんです。ですから、私たちが今、テニスの権利というと、そんなものあるんですかとか言われるんですが、社会とか我々の文化がそういうものを認めていけば、やはり権利性は出てくる。すべて権利というのは主張しなければ認められないのですから、元気を出して、テニスの権利は、テニス難民の権利はどうしたらいいのかという形で訴えていこうというのが今回の事件であるわけです。

 今回、私がやりましたテニス閉鎖の事件では6件目ですが、最初の2件はバブルの始まりから絶頂期で、インテリジェントビルを建てるための閉鎖でした。その次の2件は、相続問題で、土地を売却しなければ税金が納められない。その前と今回の2件が経営難で、理由を追っていくとだんだん貧しくなっていく。

 結局行き着くところは税金の問題に突き当たるんですが、我々は、テニスをするに当たって払っているお金は、土地や家を建てるために借りる人たちの、3倍から7倍払っているんですね。にもかかわらず、1通の閉鎖通知で出ていかなきゃならない。これはおかしいんじゃないだろうかという議論もしました。

損害賠償で片付ける日本社会の貧しさ露呈

 結局は、金を払えばいいと。例えば公害の問題があります。公害を出したときに、垂れ流しの問題や、煙も出して、これが病気の原因だと言われても、因果関係が証明できない限りは損害賠償の責任が無いと、会社が延々と引き延ばしますね。因果関係が認定されたときに損害賠償する。損害賠償すれば、それでいい。それが法律の組み立てなんですが、この損害賠償理論そのものが、逆にそういう損害を出すことを容認している。要するにクラブも生き物であるんだから、お金を払えば、入会金を返せばいいじゃないかと。そういう理論がおかしいんじゃないかと私は思うわけです。

 クラブは、人々とか、地域とか、時間とかが、有機体に絡み合いながら、一つの大きな、木のようなものをつくっていて、その下で休む人もいれば、遊ぶ人もいる。そういうものを、生きているものをある都合で切り倒すという行為であるから、殺すようなものですね。お金を払えば、そういう行為はいいんだという考えが仮に我々にあるとすれば、それは、極論ですけれども、殺人をお金でやってもいいんじゃないかということになる。しかし、金では償えないもの、金では買えないもの、そういうものが本来あるはずなんです。それを損害賠償議論とか、契約違反の議論で片づけようとするところに、限界とむなしさと、社会の貧しさが露呈してくるわけです。

 だから、テニス会員権を、権利ですかと言われれば、それは、ちょっと法律家としては困るんですけれども、やはりテニスぐらいもできないような国じゃ、やっぱり貧しいんじゃないのと、もう豊かな国になったんだから、テニスが普通にできる環境は普通のことじゃないですかというセンスで、物を考えていきたいと思っているわけです。

 今回の問題も、極論すれば、私たちが反対していても、サッポロが仮に閉めちゃえば、損害賠償議論になっちゃうわけですね。それじゃ、私たちの求めているものではないから、閉鎖しないでくれというのが一番良いんですが、少なくとも水谷さんのケースのような展開があればいいと思ってやっているわけです。

 皆さんが、こういう難民が出ても、あまり保護されないのは、テニスがハイソな遊びだと、おまえらぜいたくだと言われる……。私は、これは昔の55年体制と同じだと思う。ハイソでなく、もっと普通の権利であるはずだと思うので、今回の事件は受けているわけです(拍手)。

【司会】  どうもありがとうございました。利用者側からしますと、ただただ存続してほしい、存続、存続と叫びがちですけれども、ただいま冷静に問題点を分析してくださいました。続きまして、蝶間林さん、ご専門の立場から閉鎖問題につきまして、生涯スポーツとしてのテニスとか、それから心と体の健康とスポーツといったような面からお話ししていただきたいと思います。

勝負の小さな挫折が育む忍耐と心のゆとり

【蝶間林】  テニスクラブの果たしてきた役割と現状というテーマなんですけれども、果たす役割というのも付加させていただいて考えてみたいと思います。生涯スポーツというふうに今、言われましたが、日本には、スポーツと言われるのが百数十種類あるんです。そのうち生涯スポーツとして認知されているものは10か20ぐらいじゃないかなと思います。僕は、テニスを長い間やっていて、今の天皇がテニスで結婚されたということが、非常に鮮烈に残っています。そこからハイソなスポーツというふうに今、吉田さん言われましたけれども、自分でやってみたら、とんでもない泥だらけのスポーツで(笑い)、汗水垂らして、ひどいときはクレーコートをぞうきんがけまでやらされました。それでも、90歳ぐらいまで平気でやっている人もいるんですね。スキーも息の長いスポーツだと思うんですけれども、テニスもやり方によっては非常に息が長い。そしてテニス人口は、先ほど内海さんが150万人ぐらいと言われたんですけれども、大学や高校でちょっと授業でやっているというような人たちも含みますと、約1,000万人というふうに総務庁では言っています。

 テニスは何でやるのかと言ったら、やっぱり楽しいからやるんですね。スポーツというのは、フランス語のデ・ポールというらしいんですが、心が離れる、要するに気晴らしとか、遊びという概念ですね。子どもが外で遊んでいると、遊ばないで勉強しなさいとよく言いますが、遊びというのは、別の言い方をしますと、ゆとりというふうになるんです。たとえば、車のアクセルとかハンドルとか、みんなゆとりがあります。あれも遊びというわけです。

ですから、日本人のスポーツ文化が少ないというのは、いわゆる遊び心が無いというふうに考えることができるんじゃないか。つまり、仕事をして、余った時間にテニスをやって、遊び心を学ぶ。要するに、スポーツというのは、仕事や勉強の日常から、遊びの非日常への解放ということになるというふうに思います。

 今、学校の中で、僕も教育にかかわる人間ですので、登校拒否の問題とか、いじめの問題、学級崩壊の問題等も少し関係しているんですけれども、今の子どもたちというのは、わりと挫折感のないように育ってきているんですね。できるだけ親が庇護してですね。

 スポーツというのは、テニスなんかは特にそうなんですけれども、初心者のときは、絶対勝たせてくれないんです。渡辺康二さんもコテンパンに僕をやっつけてくれましたね(笑い)。そういう強い者と弱い者というのがはっきりしているんですね。これは挫折ですね、はっきり言って、いじめとも思いますけれども(笑い)。これに慣れることが実は非常に大事で、挫折感のないまま大人になって、五十幾つになってからちょっと会社が都合悪いから、なんていうことで挫折を感じちゃうとすごい病気になっちゃうわけです。ですから、小さいうちから、何回も何回も小さな挫折を繰り返していくということは非常に心の体制ができる、ということが言えると思います。

 もう一つは、異学年交流、テニスコートで言えば、異なった能力の交流がそこで起こるんです。ママさんたちは、習い始めのころは、もちろんビギナーで、いろんな方にやっていただいて覚える。ある程度強くなると、あまり下手な人とはやりたくないな、という感じにすぐなるんですけれども(笑い)。僕もずうっとテニスをやっていまして、自分よりも下の人とやると非常に勉強になるんです。逆に、下の人はあまり勉強にならないというふうに思ったほうがいいかもしれない。コートの脇に寄っていろ、ネットにくっついていろと。手を出すなと(笑い)。これじゃテニスじゃないんじゃないかなと思うんですけれども、そういう能力の下の人とやると、上の人は非常にテニスがうまくなる。これは僕が考えていることです。ですから、皆さん方もぜひ、これからは心を開いて(笑い)、やっていただきたいと思います。

教育崩壊、医療費増大まねく「難民」増加

 いずれにしてもテニスというのは、幾つかの技術がありますけれども、自分がこうありたいという目標を設定して、そこに向かって努力して、泣いたり喜んだりして、自己実現を図っていく、自分をつくっていく、そういう面では非常にすばらしいスポーツだろうと思います。

 それからもう一つは、医療費、今、国民医療費が30兆円と言われているんですね。きのう、そごう6,500億円ですか、導入するという。そんなものじゃないですね。30兆円というのは。テニスをやって健康になる、ときどきエルボーで痛い痛いという人もいますけれども、一般的には心臓疾患とか、いろんな内臓疾患とかというものに対しては、非常に適度な運動があってよろしいんじゃないかなと思います。競争の原理も働きますし、勝てばうれしいですし、負ければ悔しい。その負けたときが非常にうまくなる、自分がよりバージョンアップといいますか、上書きといいますか、そういう言い方もできると思うんですけれども。良くなるスポーツだろうというふうに思います。そういう意味で、「難民」が増えるということは、非常に困った問題ですね。何とかここで、1つの、テニスをはじめとするスポーツ文化が日本の中に根付いていただけたらいいなというふうに考えております(拍手)。

【司会】  「難民」が増えては困るというお話があったのに、なぜか今、心が豊かになるようなお話でございましたね。ありがとうございました。続きまして、渡辺さん、テニス協会のお立場や、指導者のお立場などから、この閉鎖問題をどのようにお考えでしょうか。

家庭育むスポーツ見捨てる企業非常に残念

【渡辺】  昔いじめた蝶間林君に、今は、超いじめられております渡辺です(笑い)。

 テニス協会の立場からすると、これはちょっとおこがましい言い方かもしれませんが、テニスクラブというのは、あくまでも日本のテニスにとりましては、強化と普及の両方の拠点であるわけです。強化については、学校の部というものが両輪の半面です。

 最近、特に、テニスクラブ出身のプロの選手が増えてきています。そういった意味では、強化という面で、テニスクラブは貴重な存在になっています。それと、皆様も感じておられるかと思いますが、テニスはファミリースポーツの代表格になっていますね。スキー、テニス、それからちょっとお金がかかりますけれども、ゴルフ、こういったものがファミリースポーツの代表格になっております。

 子どもが学校のテニス部で練習をして、帰ってきて、親御さんと話をするときに、親御さんもテニスをよくしていれば、テニスの談義に花が咲くということは会員の皆様も既にお感じになっておられることだろうと思います。そういった意味で、非常にコミュニケーションが図れるスポーツです。新聞の記事で、ラケットで親がなぐられたという記事は聞いたことがない(笑い)。金属バットはときどきあります。ラケットはないですね。ですから、非常にテニスをしている家庭の中で、家庭内暴力というのは無い、と断言できると思うんです。

 そういたしますと、このテニスクラブという、せっかく世の中のためになっているものをつぶすという行為は、ひょっとすれば家庭内暴力の温床を逆に増やすということになりかねない(笑い)。これはちょっと極論でございますが、むしろそういったせっかく世の中の役に立っているテニスというものを企業が見捨てるのは非常に残念だなと思います。

 昔、甲子園に100面コートという有名なテニスクラブがございました。大阪ガスさんが経営していたんで、そうそうたる、コートが100面ずうっと並んで、向こうが霞んでいたというコートらしいんですけれども、これがそういった会社によって運営されていた。ところが、それは、会員によって自主運営をなさるということで、朝早くから、早起きテニスというもので、5時とか6時から愛好者が集まって、そこにまた好きな方がおにぎりを持参して、みんなで食べながら、朝の練習に励んだということがありました。この甲子園テニスクラブが母体になりまして、関西テニス協会というものが今も存続しているんですが、この関西テニス協会は、ここのおかげで、日本テニス協会よりも上だというふうに今でも思っておられます。したがいまして、両協会は、相いれないものがいまだに続いておりました(笑い)。これはやっかいな問題である。ちょっと話がそれましたけれども。

 そんなことで、テニスクラブの運営といいますか、ボランタリーといいましょうか、会員それぞれの創意工夫と熱意でもって、運営をされるのが一番クラブとしていい運営になるんではないかと思っております。テニス協会としましても、そういった方向にぜひ行っていただきたいなと思います(拍手)。

崩れる企業理念「豊かなコミュニティー」

【司会】  ありがとうございました。大変楽しいお話でございました。

閉鎖問題に関しまして、それぞれのお立場からご意見をいただいたんですが、この後はご自由に、テニスクラブの果たしてきた役割と現状といった感じでお話を、いかがでしょうか。

 それでは、水谷さん、お仲間のお声などを代弁していただきたいんですけれども、テニスクラブの果たしてきた役割という感じで、例えばリタイアなさってこれからゆっくりテニスをしようという方とか、いろいろなお仲間がいらっしゃると思うんですけれども、その方たちのお声をお聞かせください。

【水谷】  私どもの、元多摩川園ラケックラブは、東急不動産という会社の経営で、19年前に開設いたしました。そのときの開設の理念といいますか、東急は、ヒューマニティ東急として豊かなコミュニティーをつくりたいと、格調の高いクラブを運営したいから、会員の皆さん、日本屈指の名門クラブに育ててくださいと、こういう高い理念のもとに開設され、私も早速入ったわけですけれども。

会員の中には、このクラブに入りたいがために、家を売却して、近くに引っ越しという方も何人もいらっしゃいますし、今は忙しくてとてもテニスが出来ないけれど、退職後の楽しみに、テニスはしないけれども10年間、会費を払い続けてきたという方もいらっしゃいました。その方々も今回の閉鎖で、払った会費はすべてパーになったわけでございます。そのほか、かなりお年を召した方で、ご両親の世話をなさっている、大変な老老介護なんだけれども、少しでもあいた時間に近くのテニスクラブへ来て、一時を過ごすのが何よりの気分転換、これがあるから続けていけるという方もいらっしゃいました。

 今、会社は、どういうふうに言っておるかと申しますと。あの土地は、課税評価額で100億円の土地ですと。会社は資産を投資したら、それに見合う収益を挙げることは株主に対する責任であります。よってこのクラブの経営はできません。つまり、高い理念を掲げて開設したクラブというものと、企業としての収益を挙げるという、株主の要求に対して応えるという考え方が全く相入れなくなっているわけです。先ほど申しましたように、クラブのあり方という根本的な問題があるんじゃないかと思います。

結局、事業として成り立つことは無理というわけですが、中には企業として非常にテニスに理解のある企業もありまして、テニスクラブをつくりたい、運営したいなという会社もあります。したがって、やはり何か税金面で、日本には無いんですけれども、公益事業でもないけれども、営利事業でもない。非営利の事業体というふうなものができるような形にならないと、大変これからのクラブ運営というのは難しいんじゃないかなという気がします(拍手)。

仕事の合間に短時間ダイエット効果の魅力

【司会】  ありがとうございました。クラブのお仲間の方のお声など代弁してくださったときに、家を売って、近くに越してこられた方があるというお話で、会場の皆さん思い当たる方があるんじゃないでしょうか。大きくうなずいている姿が見られましたね。

 クラブの存在意義ということで、峰岸さんなどは、お仕事柄、曜日を決めてスポーツをするとか、何カ月も前に公共施設を予約するとか、そういうことは大変難しいと思うんですけれども、こういうテニスクラブが近くにあると、短時間でもちょっと汗が流せるとか、そういった意味で、テニスクラブというのは非常に便利なところではなかったかと思うんですけれども、いかがですか。

【峰岸】  スポーツする場所ですね。テニスコートは縦横何メートルかもよく知りませんけれども、そういう場所で、例えばゴルフというのはある程度の距離が要って、すごい遠い、広い場所が必要だと。テニスはその四角の中で、相当ハードなスポーツだと僕は思うんです。特に僕は、テニスが何年たってもあまりうまくならないもんで、力のテニスをいまだにやっていますけれども、そんなもので、人以上に余計エネルギーを使いますもんで、僕にとっては、短時間で過酷なハードな運動になるもので、非常にダイエットにもいいし、短時間でできるというところが、僕はとても魅力です。

【司会】  ありがとうございます。確かに、テニスは、主婦らもそうですが、時間がありそうでコマ切れの時間しかないというような人にとっても、簡単に汗を流せるというところで、クラブテニスは大きな存在意義があるのではないかと思います。いかがでしょうか、蝶間林さん。

仕事帰りに汗流してビールで楽しい語らい

【蝶間林】  テニスクラブに、私は2つ入っています。1つは横浜のサントリーテニスガーデンというところ。大学の帰りに寄って、サウナ会員みたいなもの、サウナ入ってビール飲んで、ビール飲んでサウナか、どっちだったか……、もう一つは湯河原ラケットクラブ、これはつぶれてしまいましたけれども、また、復活いたしました。今度は入会金が300万ということで、ちょっと高いですね。でも、温泉とホテルもありますので、別荘という認識で行けば安いかなというふうに思うんです。新しい湯河原ラケットクラブで、僕はオーナーに、やっぱりテニスクラブで、テニスを長く続けていくには、少しずつうまくなっていったほうが楽しいんじゃないかということで、レッスンを月1回、ちょっとだけやるようにしております。

 といいますのは、やはり年齢が30歳とか40歳とかになって、テニスを始められた方というのは、どうしても速いボールを打ちたいということで力むんですね。テニスエルボーの研究をいろいろしたんですけれども、やっぱりバックハンドでなると言うんですが、フォアハンドのときにも相当グリップを強く握っているんですね。ですから、フォアハンドでバテバテになってしまいまして、バックのときに、ほんとうはラケットを少し立てたほうが楽なんですけれども、これが下がっている状態。そして真ん中に当たらない、そうすると、ひじがピーンと伸びまして、そしてエルボーになるんじゃないかというような仮説を実は立てまして、それを証明してくれる方がいっぱいいらっしゃるんで(笑い)。逆に言うと、いかに力を抜いていいショットを打つか、すばらしいショットを打つかというのは、年配になってもテニスを長く続けるコツにもなりますし、うまくなるコツでもあろうと思っています。康二さんの得意なフォアハンド(笑い)。

【司会】  フォアハンドのほうから一言。渡辺さんは、クラブテニスに所属していらっしゃいますか。

【渡辺】  所属はしていますが、単なるメンバーで、政治的活動は一切いたしておりません(笑い)。

【司会】  プロの方でいらっしゃいますので、ちょっとお立場は違うかもしれないんですけれども。ただいまお話しいただきました蝶間林さんは、会場の方、ご存じの方は多いと思いますが、数々の戦歴をお持ちのプレーヤーでいらっしゃいます。ご紹介まで、もう皆さんよくご存じだと思いますけれども。

【司会】  いかがですか、吉田さん、一プレーヤーとしては、テニスクラブをどのようにお考えでしょうか。突然やわらかいほうの質問になりますが。

【吉田】  テニスは好きなだけでそんなにうまくはないんですけれども、1週間に2度やることは決めて、かなりの率では実行しております。一番腹が立つのは、職場、裁判所が日比谷公園の前にあります。日比谷公園の中に、最初はクレーだったんですけれども、今はオムニになっていますが、すごい良いコートが10面ぐらいパーッと並んでいるんですね。あそこでやっているのは、いつも学生なんですよ。コートの順番を取るのに何人かで並んで抽選をやるから、学生は絶対勝つわけですよ。だれが当たってもいいわけですから、私たちは絶対出来ない。都心で、あそこでテニスが出来れば、ほんと行き帰りにちょっと出来るとか、本来あそこで学生がやるというのはおかしいと思うんですね(笑い)。どう考えたって学生は、学生こそ時間があるんだから、何もあそこの日比谷公園の真ん中で、私たちにこれ見よがしにやることないと思うんですけれども。

 テニスの良いところは、ゴルフは確実に1日つぶれますよね。私たちは仕事を終わってすっ飛んでいけば、夜、ちょっとできるということで、生活の中に入ります。普通に出来るという意味でテニスはハイソでなくて、ポピュラーな愛されていいスポーツだと思っています。

生活の悲喜こもごも支えるコミュニティー

【司会】  ありがとうございました。それでは、ここでパネリストの方はちょっとお休みをいただきまして、客席のほうから、一プレーヤーの方に、この閉鎖問題に絡めまして、体験談をお話ししていただきたいと思います。田中さん、よろしいでしょうか、お願いいたします。

【田中】  ご紹介いただきました田中民恵です、グリーンプラザの会員です。私は、主人と娘2人、昔から、ずっとテニスをしていて、娘たちも学校でもしていましたし、休みのときはリゾートなりどこかでみんなで家族で出来るということで、テニスを楽しんでまいりました。

 それから、「テニス難民」ということでは、私ももう既に「難民」経験者でございまして、グリーンプラザに入る前に、私たちは小田急成城テニスガーデンというのが喜多見の駅の前にございまして、そこに入って、十数年プレーしてまいりました。その前ですけれども、まだ子どもが小さかったころは、主人の会社のテニスコートで楽しんでまいりました。今、もう会社のテニスコートは大きなマンションに変わってしまいました。小田急成城テニスガーデンは、今、電車の車庫になっております。

小田急でもそれなりに楽しいテニス仲間もいっぱいいて、テニスライフを楽しんでいましたが、なんと言ってもやはりコミュニティーをつくるということにはとても時間がかかります。グリーンプラザに入ってから、いろいろな苦労とか努力とかしてまいりまして、もう10年以上たちまして、やっとなじんで、すばらしい仲間にもめぐり会え、皆さんと楽しくテニスを今、させていただいております。

 それから、個人的なことですけれども、2年半ほど前に、夫・和政が他界いたしまして、夫とも一緒に楽しんだのがこのグリーンプラザなんです。きつかった時期に、ほんとに支えになってくれたのはテニス仲間でしたし、それ後、コートに戻ってきて、ほんとに気持よくプレーでき、楽しかったですね。ですから、クラブが無くなるのは非常に忍びなくて。私はこういう環境と、いつでも行けば迎えてくれる仲間がいるということは、何ものにもかえがたいなと思います。個人的な経験でちょっと申しわけありませんでしたが……(拍手)。

【司会】  貴重な体験談を本当にありがとうございました。

 それでは、ちょっとお時間が長くなりましたので、ここで一たん休憩をとらせていただきます。約10分間の休憩でございます。パネリストの方々、しばらくお休みください。ありがとうございました。


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