性〜さわやかに考え、すこやかに生きよう
このページは一冊の書物を分割し、連載したものとご理解ください。
前回に続いてNHK・「日本人の性」プロジェクト編、「データブックNHK日本人の
性行動・性意識」(NHK出版)という書物からのお話です。1999年、NKHは「日
本人の性」プロジェクトチームを結成しました。そして、その年の11月末から12月に
かけて、同チームは16歳から69歳までの国民3600人を対象とした性に関する調査
を行ないました。一般の週刊誌や月刊誌が報ずるいわゆる「セックス調査」は、あまり信
用できるものではありません。多くの場合は特定の集団に対しての調査で、統計としての
信頼性に欠けるように思います。アメリカではキンゼイレポート、日本ではかつて「モア」
が行なったレポートが有名ですが、両者とも統計としての信頼性には欠けると評価されて
います。それ以外の雑誌などは、売ろうとするあまりのことでしょう、刺激的な内容ばか
り強調する商業的な歪みも多く見られます。しかし、このNHKによる調査はそれらと全
く異なるものです。統計学的にも信頼ができるもので、今のところ「日本人の性」につい
ての信頼できる本格的資料としては最新のものではないかと思われます。
そのから生れたテレビ番組
翌年にあたる2000年の4月からはこの統計をもとに制作された番組がNHK教育テ
レビにおいて4回にわたって放映されました。ETV2000「揺れる男女〜NHK・性
についての実態調査より」と題されたその番組は次のようなタイトルが付けられました。
タイトルを見ただけでその概要が予想できますし、その数字には大いに考えさせられるの
ではないでしょうか?
第1回「中絶経験率43%
避妊できない夫婦関係」
第2回「性的被害33% 夫婦に潜む性暴力」
第3回「10代の性体験率36%
性教育のジレンマ」
第4回「セックスレス19%
日本社会は変れるか」
皆さんはこのタイトルと数字をご覧になってどのような感想をお持ちでしょうか?
今回はその中から婚前性交渉に関する資料を紹介します。
婚前性交渉に対する意識
16歳〜30代世代の若年層と40代〜60代の中高年層とに分けて婚前性交渉に対す
る許容度は以下の通りです。
「男性の婚前性交渉に対しての許容」
男性若年層 89.8%
男性中高年層 59.8%
女性若年層 87.9%
女性中高年層 40.1%
「女性の婚前性交渉に対しての許容」
男性若年層 87.2%
男性中高年層 46.3%
女性若年層 88.4%
女性中高年層 30.8%
明らかな意識の変化
二つの世代を比較するとそこには大きな変化が見られます。中高年層は若年層に比べる
と婚前性交渉に対する許容度は低いのですが、特に女性の婚前性交渉に対して否定的なの
が特徴でしょう。そこには「男性はある程度仕方ないが、女性については結婚までは清い
体で」という日本古来の男性に甘く女性に厳しい姿勢が見られます。
若年性層の特徴は、男女とも87〜89%と圧倒的多数が婚前性交渉を認めていること
です。さらに特徴的なことは婚前性交渉をするのが男性でも女性でも、ほぼ同じ許容度だ
ということです。つまり「男はともかく女だけは」という価値観は既に崩壊しているとい
うことです。
性情報の持つ問題性
私はこのような状況を作り出した最大の要素は無責任で商業主義的な性情報を流してい
るマスコミあると考えています。さらに言うなら、そのような状況を黙認してる日本社会
全体に責任は問われるべきだと思います。婚前性交渉に伴うリスクが社会に十分理解され
ていたら、このような状況は生まれなかったことでしょう。
皆さんは次のような発言をどう思いますか?「皆さん、これから冬ですね。冬はフグが
最高においしい季節です。刺し身もよし、鍋もよし本当に冬のフグは最高ですね。ですか
ら、皆さん、海でどんどんフグを釣って食べましょう!?」この発言に乗せられた人々の
中からは多くの入院患者と死亡者が出るでしょう。この発言はフグを食べる人々に対して
当然、知らせるべき重要な情報を欠いているからです。フグには毒があるというリスクと、
それ故に免許を持つ調理師に調理してもらうという指示を伝えていません。
性におけるインフォームドコンセントの大切さ
医療の世界では、患者に対して治療や手術に際して、それが与える利益とリスクを事前
に伝えた上で本人の承諾を取るという、「インフォームドコンセント」が定着しつつあり
ます。性の世界も医療同様に、私たちの健康や命、ひいては人生全体に関わるものです。
当然、インフォームドコンセントはなされるべきだと私は思います。
多くのマスコミの主張は「フグはおいしいよ」と宣伝するだけで「毒があるよ。プロに
料理してもらうように」という注意は怠っているようです。つまり「性は楽しいよ、気持
ちいいよ、最高だよ」と言いながら、そこにあるリスクには触れないのです。様々な性感
染症、予想外の妊娠、それに伴う諸問題、中絶、あきられ捨てられる女性たちの姿、そう
言った現実を多くのマスコミは伝えようとしません。
私などはこれは歪んだ偏った情報というよりも、もはや情報操作やマインドコントロー
ルに近いのではと思ってしまいます。
クリスチャンへの大きなチャレンジ
私たちはまず、このような時代にあって純潔を守ろうと願う若者たちの大変さを理解す
べきでしょう。未信者が圧倒的多数の友人達の中にあれば、若いクリスチャンは自分の価
値観の方が異常ではないかと思いかねません。何せ、未信者の方々の多くは情報操作とマ
インドコントロールの犠牲者なのですから。本当は聖書の価値観を知っているクリスチャ
ンの側の方が「正常な少数派」なのに。本当に若い世代のクリスチャンは、まさに孤軍奮
闘、本当に大変だと思います。若い世代へのそうした暖かな理解に立って、私たちは聖書
から「男女とも結婚までは純潔を」と訴え得る信仰や勇気を自らにチャレンジしたいもの
です。