写真

2002年4月30日設置

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2011/02/26(土) 平成版バベルの塔

浮浪者達の住まいである多数の小さな段ボール箱が並ぶ隅田川。
その河岸から眺める東京スカイツリーのそびえる風景は、圧倒的に異様だった。

使用
カメラ
Nikon CoolPix P7000
■平成版バベルの塔
平成版バベルの塔

東京スカイツリーの建設開始時はとてもワクワクしたのだが、建築が進むにつれて
私は違和感しか感じなくなってしまった。

ここまで高い建築物を地盤の緩い川沿いに建てる必要がどこにあるのか?
東京タワーやサンシャイン60と異なるこの圧倒的な細さは現実離れしていないか?
衰退し始めたこの国にとって、あの有名な「バベルの塔」と同じ結末を暗示するものではないか?
今の私達がバブル時代に建てられた都庁を眺める時に感じる馬鹿馬鹿しさを
数十年後の日本人は東京スカイツリーを眺めながら感じるのではないか?

確かに建築技術は優れているのかもしれない。
底抜けに税金を無駄遣いして公共事業に投資して、ダムだの道路だの箱物を作りまくって
時代遅れの土木大国で磨きぬかれた技術が生み出す無駄に高くて細いヒステリックなバベルの塔。
現在の日本の国力を体現するものではなく、バブル崩壊後の政治的混迷と
現状変革の拒否がもたらした経済的低迷、その迷路の先に非現実的な塔建築がある。

この建築に税金は使われていないから、納税者としては文句をつける権利は無いが
あくまで個人的な感想として、公共の場に堂々と「汚物」をぶちまけられたような気分になる。
この国が内包する歪というか狂気を露骨に提示されているようで、この感覚は
重厚感溢れる東京都庁の地下に大量の浮浪者が住んでいる風景を見た時に酷似している。
久しぶりに歩いた隅田川河岸にはダンボールハウスが目に見えて増えていた。

ナンダコレハ?

これが私達の目指したこの国の未来なのかと。
無駄な塔だのビルだのを建てる前に他にするべき事があるのではないかと
いろいろ考えてしまうから私個人は東京スカイツリーが嫌いだ。

東京タワーやサンシャイン60は純粋に明るく楽しめる。
なぜならこれらの建築物は戦後の高度経済成長の象徴だから。
私たち日本人の過去の成功の証だから。戦後を全力で生き抜いた人々の努力の結晶だから。

■平成版バベルの塔
平成版バベルの塔

対岸に小さく写るダンボールハウスのブルーシート。

嫌いだといいつつ写真に撮っているのはバベルの塔ではなく、屋形船なのです。
昔からの日本の文化として着実に根付いて継続している船。
数十年後の隅田川の水面にも間違いなく屋形船が滑っていると思う。
いずれ廃れる塔よりは、人々によって継続されていくであろう屋形船のほうが私は好きだ。

■隅田川の風景
隅田川の風景

墨田川沿いの浅草には某ビール会社の汚物型金色巨大構造物もあるけれど
そんなキワモノより屋形船の乗り場の渋さのほうが格好いい。

■隅田川の風景
隅田川の風景

屋形船とその船着場の柱の上で揃って休む鳥達。
こんな風景が好きで、私はよく川岸で風に吹かれながらのんびりハンバーガーを食べる。

今日は2月末でとても冷たい風が流れる隅田川河岸にて、たくさんのダンボールハウスと
ベンチで呆然と座っている人々を見てしまった。
都内では見慣れた風景ではあるけれども、とても哀しくなった。

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