日誌

2002年4月30日設置

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2011/09/21(水) 日本の明るい未来を作り出すためには

私がまだ小学生だった頃。

小学校の社会の授業では、この国が経済的にいかに発展していて
また今後も明るい未来が予想される国であることを
資料集の円グラフや棒グラフを使って具体的に教えてもらった記憶がある。
世界のトップレベルの経済大国であり、また犯罪もとても少ない安全な社会
それが私達の住む国、日本なのだと教わった。

その後、バブル崩壊後の失われた20年を経たこの国では
明るい未来のかけらも無くなってしまった。
国の財政破綻はいずれ起こるし、国内経済は空洞化していくし
この社会を牽引する若い人口が減り、そして犯罪検挙率もみるみる下がっている。
年金制度は破たん寸前だし、また個々の家庭の貯蓄率も下がる一方だ。

20年前の小学校の社会の授業で不思議に思った事が2つある
1つは砂漠の中に壺を埋めて掘り出す作業は有益であるという話。
そしてもう1つは増え続ける一方の国家の赤字を返す方法が無いという話。

【砂漠の壺】
何もない砂漠の中に壺を埋め、またそれを掘り出すだけの単純作業は
無益なことではなく、そのような作業をすることで雇用を生み出すことができる。
それが公共事業というものなのだ。という愚にもつかない話を教わった。
小学生の頭でもこの話の意味は全く理解できなかったが、今でも理解不能だ。
壺を埋め、掘り出すだけの単純作業は短期的な雇用を生み出すだけで
その結果としてこの国を発展させることは無く、国の借金だけが溜まっていく。
一番の害悪は壺を出し埋めすることでは人材は成長しない事と
世界の成長の流れの中からこの国だけ取り残されることだ。

当時は無駄な公共事業が大ブームになっていたから
こんな有害なたとえ話でも、あえて小学生に教えていた。

【国家の赤字】
20年前の時点でも、すでにこの国の借金が溜まり続けていて
返済するあてが無いのは小学生でも気がついていた。
その問題に対する大人側の言い訳として
「アメリカの財政赤字のほうがとんでもないことになっている
 それに比べれば日本の赤字はまだマシだ」
という事を学校の先生が強調していたけれども、それは何の問題解決にもなっていない。

数年前は確かに明るい未来に満ち溢れているように見えたこの国も
教育の現場から少しずつ腐りかけていたが
それは教育自体が腐ったというよりもその当時の社会状況を教えるには
このように言うしか無かったのだと思う。

あれから20年が経った日本では、現在だけをより裕福に生きようとする人々が増え
この国の明るい未来は食いつぶされている。
金銭面でより裕福に生きたいという発想は良いことだ。普通の人にとってはごく当たり前の欲望だ。
問題はそれを実現するためには代償が必要で、例えば寝る時間を削って必死で働いたり、
人が嫌がるような苦しい仕事でも耐えて働いたり、よく考えて頭を働かせたり
それらの代償として人は富を手に入れる。

それらが健全な経済の発展を支える事にもつながるのに
今のこの国では、個人の富の代償に「この国の未来」を選ぶ人が増えた。
例えば、返しようもない国債。この借金はいずれ将来の増税で返す羽目になるのに
そんなことお構いなく何も考えずに気前良くばら撒き散らして
それを効率良く回収する仕組みを作った人が不当な利益を得ている。
いずれ返済が必要な借金である以上、将来性のある産業に重点的に投資し
その産業の発展によって借金を返す方向にもっていくべきなのに
衰退産業の保護や、その日の暮らしの保障の為に借金を爆発的に増やしている。

壺を埋めることは、それ自体は何の価値も生み出さない。
その作業の費用、その借金を返すためには別の仕事を誰かがしなければならない。
他国の借金を云々報道する前に、まずは私達の積み上げた膨大な赤字をきちんと認識し
その対処方法がたとえ大増税であったとしても正面から検討しなければならない。
そして税金による投資に対する費用対効果をもっと真面目に考えるべきだ。

それが出来ないなら壺を埋める作業はやめるべきだ。
壺埋め作業員が生活できなくなると言うかもしれないが、
その作業はこの国の未来にとって無意味だから別の作業をするべきだ。
今を生きることのみを考えて未来を犠牲にするのではなく
費用と、その代償、厳しい現状から目を逸らさずに
痛みが伴うのを覚悟の上で将来に向かって前に進むことが
この国の未来を作り出すことにつながるのです。



今の小学校の社会の授業では、一体何をどこまで教えているのだろうか。
この国が極めて悲惨な状況に陥っていることをどこまで正確に教わっていて
また子供達はどのように考えているのだろうか。
自分たちが大人になった時に莫大な借金を背負わされることを教わっているのだろうか。
少し心配になった。

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