日誌

2002年4月30日設置

[メインページ] > [日誌一覧]
2010/03/06(土) これも真実だからという言葉の意味

私の高校時代の担任で写真を趣味にしている教師がいました。
その先生はいつもいろいろなことに相談に乗ってくれるし
とても話しやすくて素敵な先生だったのですが
一度だけ、私がその先生を本気で殴ったことがある。

その先生が道路で寝ていたホームレスにカメラを構えて
シャッターを切った瞬間、当時はとても短気だった私が
「あんたは人の心の痛みがわからんのか!」
と怒鳴りながら力いっぱい先生を殴った。
横にいた友達も、私とほぼ同じタイミングで先生に詰め寄っていた。
私立高校だったから退学・停学もありえる言動だったのですが
特に何も問題になることもなく、無事に卒業させていただきました。

殴られたときに先生が言った言葉がとても印象に残っていて
「これも真実だから」
彼はそう言った。

確かに真実だし、それから目をそむける必要がないのは百も承知の上で
ただ、趣味レベルなのにホームレスを撮影することにとても違和感を覚えた。
撮られる相手の気持ちを考えずに、冷徹にシャッターボタンを押していいのだろうかと。
撮影者として、それだけの覚悟ができているのだろうかと。

その先生は悪い人ではないのはよく知っていたし
「これも真実だから」という言葉の意味を私も少しは理解したいと思って、大学に入ってから
富士フィルムのAPSタイプの小型カメラ エピオン ティアラIX(とても懐かしい!) を購入しました。
そのカメラを常にポケットに入れて、様々な風景を実際にファインダーを通して覗いてみることで
この言葉の意味を考えていましたが、私にはどうしてもよくわからなかった。

いまだに「これも真実だから」の言葉は理解できない。
私はホームレスにカメラは向けられない。
報道カメラマンではない私は、それでいいと思う。

はっきり言って馬鹿ではあったけれども、悪いと自分が信じたことに対して
全力で噛み付く事ができた昔の私は、少し偉かったなぁと思う。

[メインページ] > [日誌一覧]