読 書 感 想
人事破壊 その後10年そして今から
著者:日下公人 出版社:ビジネス社 価格:952+税
 著者日下さんが約10年前(95年7月)に発行した「人事破壊」と題した本を再刊することになって、10年間で人事の考え方がどのように変化してきたか、そして今後とのように変化して「良い日本型雇用関係」が創出されて行くであろうかを予想しています。19730年生まれの著者は銀行に勤務されていたので、人事関係には非常に詳しい方のようです。
 団塊世代の私としては30数年前の人事の印象が一番強くて10年前の人事と現在の人事の違いが良く分かりませんが、昔は会社が研修やOJTで新人社員を数年かけて育てていくという感じがあったと思いますが、90年前後バブル崩壊以降企業は採用を極端に減らして、目前の効果を重要視して、長期的な目標が失われてきたように思います。
 派遣法が改正されて、対応業種が大幅に拡大れ派遣市場の拡大と、また労働市場の採用側有利の状態が流通業界におけるパートタイマーの大量採用を可能としており、「正社員」とは何かを再考させられる時代となっています。日本が得意とした製造業までに派遣社員が投入される時代が来ています。正社員採用においても即戦力になる人材でないと採用されない状態になっています。特に中途採用においてはその傾向が著しいと思います。
 社員、派遣、パートの人員構成が今後の労働環境を支える方向に見えますが、本当に良い方向なのか疑いたくなります。費用対効果で人件費を考えればそうかも知れませんが、このままでは社会保障制度が壊れていくのではないかと心配です。
 このような人事制度の変更によって、終身雇用制度は壊れて、企業は身軽なっているというのでしょうか。能力主義や成果主義と言いながら人の使い捨てが可能になってきたという言い方も言えるかも知れません。
 今の製造業は人件費の安い中国へどんどん進出していますが、昨今の中国情勢を見ると経済の急成長につれて、ナショナリズムが高揚しており、日中関係がぎくしゃくしています。平穏な時代は終わった可能性があります。私の予想では一段と外国人労働者の受け入れが緩和され新しい雇用関係が模索されていくものと思いす。日本1国だけが良ければという時代も終わりつつあります。
ショートカットキー活用事典
著者:猪早 圭 / Jin  発行:インプレス  価格:¥880+税
 現在のPC操作はマウスを使うことを基本としてアプリケーションは作成されており、ビジュアルな画面で必要な項目欄をクリックして必要機能項目を選択したり、カーソルを位置づけてデータを入力したり、入力済みデータを確定して実行を開始したりと人間とアプリケーションの重要なインターフェースとなっています。
 本書ではPCの操作をより効率的に実施する為にショートカットキーを覚えることによってビジネスが10倍早くなると説いています。私などの素人から見ると邪魔だと思うようなキーに重要な機能が割り当てられていることを再発見しました。
 日頃あまり気にしないで使っている106(JIS)キーボードですが、よくみるとメーカ毎に微妙に異なるキーの追加もあります。改めて眺めてみるとじつにたくさんのキーがあります。JISキーボードはすべて106キーかと思えば109個のキーがあるものもあるようですが・・・。
 今まで、下段右下AltとCtrlキーの間あたりにあるアプリケーションキー(プルダウンリストに矢印付きマーク)を使ったことがありませんでした、マウスの右クリックと同じ機能表示がされることを知りませんでした。
 ショートカットキーはWindows用とアプリケーション用に分類されますが、Windoes用はアプリケーションでも共通に使えるので、こちらを先に覚えると利用価値が高くなると思われます。
 WordやExcelアプリケーション専用のショーカットキーもたくさんあって簡単には覚えられませんが、利用頻度の高いものから選んで使えば段々と覚えてくるのかなと思います。Excelでは当日の日付を入力する場合が多いと思いますが、Ctrl+;で年月日が入力できるのですね。また、同じ列で入力済み項目を表示させるAlt+↓も利用価値がありそうです。Wordでは発付け先の文字列を選択してCtrl+Vで貼り付けると選択済み文字列はクリアされ、コピーした文字列が張り付きます。
 筆者は「今、何やったの? 操作が早すぎて見えなかったよ!」「この言葉を耳にすることがあったら、あなたのビジネスは何倍も早きなっています。」と言っています。気が付いたら残業も減っていることでしょう。そんな日が来るのを目指して、日々精進して下さい と結んでいます。
日本の力
著者;石原慎太郎・田原総一郎 発行:文藝春秋 価格:¥1333+税
 今年2005年、日本は国連の常任理事国入りを積極的に目指して頑張っている年であると思います。日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国共同で常任理事国入りの議題を事務局へ申し入れましたが、早速に中国や韓国からは反対の意見表明がなされております。頼みのアメリカは日本単独なら賛成するが、5カ国同時には難色を示すという意見を表明しています。
 このような状態で日本国内の有識者やメディアは本件に関して反対意見は出てないようですが、あまり前向きな記事も出ていないような気がします。個人的な感想ですが、日本のメディアは国連の問題をどうしてもっと取り上げないのか不思議な気がします。取り上げるタイミングを計っているのか、取り上げても記事としての価値をあまり認めたくないのでしょうか。
 このような状況の時、日本では比較的自分の考え方を明確にしている石原慎太郎・田原総一郎の対談形式の日本の力に対する認識はどのようなものであるか興味を引きます。経済力、軍事力、政治の安定性、国連分担金から日本を評価した時、戦後60年も経過したのに、今のままでよいのだと思っている人より、そうではなくもっと国連の場で活躍すべきだと思っている人の方がはるかに多いと思います。
 石原新太郎の発言は過激というかとげがあるというかそういう感じを受けるので一般論としては受け入れにくいところがあります。田原総一郎に関しては、受け入れてもいいかなというところがあります。
 石原慎太郎1932年生まれ、田原総一郎1934年生まれ、団塊の世代が1948年生まれで、14歳の年齢差で、お二人とも70歳を超えて元気です。お二人のパワーはどこから生まれてくるのでしょう。
 対論を終えての田原総一郎の下記の言葉に賛同しましたので、追記させてもらいます。閉塞感、夢が持てない、などとというのは実は曖昧さを武器にした時代の呪縛にはまった人間たちの繰言であり、この点ではマスメディアの罪が大きい。マスメディアは日本が世界から馬鹿にされている、中国経済の恐るべき発展によって日本経済の将来はないなどという自虐的悲観論を言い立てるのが良識であると時代錯誤の思い込みをしている。日本のマスメディア批判は全く当たっていると思う。
図解雑学中国
著者:渡邉義浩・松金公正 発行:ナツメ社 価格:¥1420+税
 今書店の新刊コーナへ行くと中国に関する本が非常にたくさんあるなと思います。これは2005年4月に発生した反日デモの影響がこんなに大きな反響を引き起こしたのだとあらためて感じているところです。
 3月末に「中国の大罪」の感想を追加した直後であったので自分でもそのタイムリーなことに不思議さを感じていました。経済成長の著しい中国の民が経済的に豊かになって、自由に自分の意見を述べたいという気持ちが高揚して来たという一面も考えられます。最近のメディアによると共産政権への不満を反日運動へ政府がリードしたのではないとと疑われる様相もありました。
 影の実力者ケ小平の提唱によって始まった90年代からの経済改革によって年率10%近くの経済成長を遂げて、国としての自信が高まって、世界に対しても積極的な発言が目立ってきたように思います。最近では、日本の安保理常任理事国入り案に対して積極的に反対を表明したり、特に軍備の近代化により、海軍力が大幅に増強されているようです。
 このような情勢の時あらためて中国とはどのような歴史と文化を持った国であったかをあらためて雑学として考えるには本書は非常に適したものであると感じました。中国研究の専門の先生が分かり易くまとめてくれたものであると思います。もともとナツメ社の図解雑学シリーズは各分野への入門書として図解を多用して書かれたシリーズになっています。分野としては自然科学、情報科学、社会学、人文科学があります。
 本題へ戻りますが、中華思想として、易姓革命という聞きなれない言葉があります。易姓革命とは徳を修めたものに天命が下って王朝が交代するというものですが、現在のままの共産党政権のままでいけるのか民主主義の政権へいつランディングできるかという問題が残っています。70歳の年齢制限が守られて総書記や国家者席が比較的うまく交代しているのは政権の安定には大変必要なことと思います。
 今後の中国の課題は貧富の差の解消や高齢化社会へ向けた社会保障問題が大きなテーマになると思われます。高齢化社会の問題は日本が直面している一番おおきな問題ですが、日本の解決策もはっきりしていません。消費税のアップで解決できるのならそれでもよいと思います。
 今、日本は自信を失っているのではないか、中国の自信がうらやましい気さえします。自信回復のため憲法改正と常任理事国入りが期待されます。
SOHO事業の進め方
著者:浦野敏裕+実践SOHO研究会 発行:かんき出版 価格:\1500+税
 本書は定年後をにらんで、自分にもできそうなものがあるのかどうかということで、読んでみたものです。サラリーマン時代と同等の収入を得るとなるとかなり頑張らないと簡単には行かないと思いました。またプロとして事業をやるには信用問題として会社組織までもって行く必要がありそうです。ここのハードルはかなり高そうに思います。
 しかし、定年後の仕事としてやる場合はどちらかと言うと収入よりも充実感や達成感のほうが大きくてもよいのではないかと思います。半分ボランティアと考えてやった方がよいのかも知れません。逆に中途半端ではうまく行く訳がないという意見もありそうです。
 本書は定年後の人の為に書かれたものではなく、現役サラリーマンが独立して、個人で事業を始める場合を意識しています。また、ベンチャー企業を起こしたいと考えている方にも役立つものと思います。最近まで、社内ベンチャー企業の育成と言うことで親会社が設立費用の一部や人材提供もするという動きがありましたが、成功した例はそんなに多くは聞かれないように思うのは私だけなのでしょうか。
 最近の流行としてはネットで何か新しいことやるということですが、ネット販売の商品の種類もずいぶん増加して驚くばかりです。そのなかでもオークションの流行には目を見張るものがあります。車の中古車販売がオークションの人気商品になりつつあること、株の売買のネット化などすごいと思います。それに連れてネット詐欺事件もかなり増加傾向にあるようです。私個人としてはこれらのことを考えるとネットだけで、高額商品の売買をするには抵抗感があります。
 本題からそれたので戻します、SOHO事業とはになかと言えば、SmallOffice
HomeOfficeの略ですが、情報通信技術を活用して、理想の仕事環境と生活スタイルを追求するビジネスと言うことですが、これはパソコンとネットを抜きにしては語ることが出来ません。ライフスタイル志向とスキル・キャリア志向の上に自己実現するというのが、本書でのSOHO事業の結論のようです。
チーフパーサーの国際線航空記
著者:曽我部 國男 発行:樹心社 価格:¥1500+税
 本書は会社を定年された先輩から彼の友人が書いた本ということで、是非読んで欲しいと紹介されたものです。日本航空の客室乗務員として定年まで勤められた曽我部さんが勤務時代に経験された機内・ホテルでのいろいろな出来事やチーフパーサ奮戦記を旅行ファンの方やこれから海外旅行へ行こうと思っている方向けに楽しくまとめてくれました。
 私は海外旅行は3回しか経験していませんが、長時間の飛行機旅は経験しないと分からない部分がいろいろとありますが、そういえば似たようなことに遭遇しそうになったことがあったなと思い出す出来事もあります。事前にこの本を読んでおいて、出かければきっと飛行機内とホテル内を楽しく過ごす為に役に立つと思います。
 航空輸送業界では人命を預かっている訳ですから、安全飛行が最優先されて運行されています。もし、事故がおこれば、鉄道のように途中で止まるというわけにはいかないので、近くの空港へ着陸しなければなりません。最近米国で機首の車輪が90度回転したままで、格納できない事故が発生しました。
 着陸時に爆発や火災を最小限にするため、燃料を消費して、空港の地上体制も最大限に安全や緊急対策を取って、テレビで世界中に放映される中で、着陸するとう出来事がありました。後輪での走行をできるだけ長く保ってブレーキを効かせ、前輪が着地して、煙が出始めて、おおきな炎が上がった瞬間にはどうなるのかと心配しましたが、ベテランパイロットの技術は大したものだと思ってホットしました。
 飛行機事故の80%以上が離陸時の3分間と着陸時の8分間に発生し、この合計をクリティカルイレブンミニッツ(危険性が高い11分)と呼ぶとかボイスレコーダはどこに設置されているかなど、飛行機に関する知識向上にもやくに立つ内容と思います。
 また筆者の海外体験談もお国柄によっていろいろと楽しい体験から怖い体験にも話題がつきないようです。30数年間の勤務飛行は24200時間、平均時速800kmとしたら、月まで25〜26回往復したことになるとのことです。
 最後に海外旅行の目的は何かと言えば、いろいろ上げられますが、筆者の結論は「日本再発見」と言っていますが、私もその通りと思います。「日本ほど、平和で、食文化が発展して、貧富の差も比較的少ない国は例がないのでは。」ということが、実感されると考えます。
生命燃ゆ
著者:高杉良 発行:新潮文庫 平成10年3月1日発行 価格:\590(税別)
 母校大分高専名や学生名が出てくる、大分が舞台であるとのことで、どんな小説か興味を持って読み始めました。この本は後輩の赤星君から教えてもらった本です。時代は1960−1970年代にかけての高度経済成長時代に命を縮めても会社の為というか、やりがいの為にというか命を燃焼させた45歳の若さで白血病で逝った仕事人間の物語です。
 かくいう私も1969年大分から東京へ出できて高度成長時代を経験しているので、そのような豪傑サラリーマンもいたかも知れないと思いつつ読みました。昨年末で終了したNHKのプロジェクトXのヒーローとも重なる部分があるように思います。
 解説の中沢氏によると昭和電工の大分石油コンビナートエチレンプラント建設に文字どうり生命をかけた柿下怜をモデルとした小説とのことです。主人公は東大卒のエリートサラリーマンでその現場の部下に工業高校卒の優秀な人材がいて仕事が成り立っていた時代の話ということが出来ます。
 解説者調査による下記の過去と最近の就業者の学歴変化を見ることにより、日本経済の激しい変化を感じます。
1955年のデータで、
 中卒の就業者:約70万人
 高卒の就業者:約34万人
 大卒の就業者:約8.5万人(エリートの時代)
1997年のデータで
 中卒の就業者:約0.9万人
 高卒の就業者:約29万人
 大卒・短大卒就業者:約60万人(もはやエリートとは言えない)
 私が入社した1969年も大卒はエリートだったと思います。高度成長の波に乗って70年代後半には親にも経済的余裕がうまれて、子供を大学へ行かせる親が急増し、高卒者より大卒者の方が多くなるという状態になってしましました。大卒者だけではエリートとは言えなくなり、修士、博士号をもった方も一般企業の研究所以外の部署にも就職するようになりました。
 言うまでもないことですが、学歴社会から能力主義の社会へ変わってしまいました。大勢の人が大学に行くようになったので、学歴だけでは価値は無くなり、専門分野の知識を充分持って、即戦力となれる人材が会社では望まれています。大学卒業後に専門学校に行ってITなどを勉強して即戦力をアピールしている人もいるようです。私が会社員になって37年になりますが、「各種統計データを見ると分かる様にいかに大きく変化(進歩)したことか。」としみじみと考えます。
対決
著者:高杉良 発行:新潮文庫 平成15年4月1日発行 価格:\590(税別)
 同じく高杉良の小説ですが、こちらの小説は前記とは異なっており、同じ作者がここまで書くものかと言えるほど生身の人間の貪欲な出世競争、派閥、支配欲など男の性を出し切っている内容の小説です。
 サラリーマンならこれに近いどろどろした世界があることを知っておく意味で、若い時代に一度は読んでおくと会社の中で発生していることに対して、理解がし易くなると考えられます。
 会社組織におけるトップを含めた人事権はだれが持っているかを事前に勉強し、公平であるべき人事がいろいろな横槍で必ずしも公平でなくなっているという事実を知ることは大切と思います。会社組織における最高の人事権を有しているのは社長、会社としての最終意思決定者も社長ということになっているが、現実は単純ではないようです。
 最近日本航空において、取締役会が社長へ退任依頼を突きつけるという事件がありました。会社の業績が上がらないとか、社会へ迷惑をかける事件や事故を起こすという会社はやはりトップがみるべきところを見ていないという結果がその要因になっているのは確かでしょう。
 その器に適していない人が組織の上にいるとだんだんと組織がおかしくなります。役員や社長の若返りが出来ない会社、または同じ人が長く社長を務めているのもおかしいことです。
 本小説の対決は会社と強すぎる組合の関係を描いているが、いまの時代には強い組合はほとんどなくなって御用組合と呼ばれる組合が多くなっている。衣食住がほぼ足りた時代になっては組合の団結力も高度成長時代とは様変わりしており組合を頼りにしている社員も減少傾向にあると思う。
 世の常として、時代が乱れると正義感の強い人物が現れて、乱れが収まるまでの戦いが続き、最後には正義が勝つわけですが、そのみちのりは長い。社会の乱れは政治の乱れと人心乱れから発生している。常に社会正義を正す人が出現する必要があります。会社や国家組織の内部告発が出来る社会でないと悪が蔓延る社会になってしまいます。
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