読 書 感 想
プロジェクトX 挑戦者たち1 執念の逆転劇
著者:NHKプロジェクトX製作班編 出版:NHK出版 価格:¥750+税
 プロジェクトXを読んでいるとどうしても若かった頃を嫌でも思い出してしまいます。本書の副題にある「執念の逆転劇」と言えるほどのものだったかどうか分りませんが、自分にも似たような仕事に参加したこともあったような思いがしてきます。
日本の会社は国内の会社間の競争が激しいから、そこで鍛えられると世界に通用する製品が出来上がると言われていますが、全くその通りだと思います。現在の花形製品デジカメが良い例だと思いますが、本書で取り上げている「VHS・執念の逆転劇」の印象が強烈でした。家庭用VTRはソニーのベータ方式とビクターのVHS方式の話は有名過ぎます。窓際族が世界規格を作ったという表現はどうかと思いますが、赤字の事業部から、新製品を生み出して、世界規格の製品としたというものはVHSだけでもなさそうです。新しい技術は公開すると価値が上がる例は多い。
 思い出すままに列挙してみると、ベル研の半導体特許の公開、ソニーのベータに対抗したビクターのVHSの公開、アップルに対抗したIBMのPCアーキテクチャの公開、ネットスケープ社のマイクロソフトIEに対抗したブラウザソースの公開、マイクロソフトのウィンドウスに対抗したLinuxのソース公開等が上げられます。全てが公開元の意図通りかどうか分りませんが、その業界への大きなインパクトになってより良い製品の開発に繋がって消費者への恩恵があったと思います。
 本田技研のCVCCエンジンの開発は若手技術者がカリスマ経営者本田宗一郎を越えるための険しい道のりが印象的でした。こたらも同様に技術を有償公開しました。現在の排ガス対策は触媒方式が全盛時代となっていますが、自動車の排ガス対策では電子制御が切っても切り離せない時代になっているようです。
のばそう健康寿命
著者:辻一郎 発行:岩波書店(岩波アクティブ新書) 価格:¥700+税
 56歳になって60歳以下の知人が亡くなったと聞くと自分は何歳まで生きられるのだろうとつい考えます。健康寿命を平均寿命77歳−5歳として72歳と考えると残りは16年と計算されます。
 本書では各種調査結果から、寿命を延ばすいろいろな条件が細かにまとめられていますが、一番大切なことは単なる平均寿命を延ばすではなく、健康寿命を延ばすことが大切と述べていますが全くその通りと思います。この健康寿命の定義にも何をもって健康とするかいろいろあり下記の6種が提唱されているようです。
a)不健康と自覚しない生存期間
b)労働・家事・社会参加に支障のない生存期間
c)移動に支障のない生存期間
d)基本的ADLに支障のない生存期間
e)知的・認知機能に障害のない生存期間
f)長期ケア施設に入所しない生存期間
ADLとは日常生活活動のことで、食事を摂ったり、着替えたり、排泄や入浴、身だしなみなど、生きていくうえで、最も基本となる身辺処理のことを指しているとのことです。研究レベルでは測定のし易さからADLに関する研究が多いとのことです。
 重要な健康寿命を延ばすには病気を予防して、身体を動かして「廃用」を起こさないことが結論です。廃用とは単純に使わないものは衰えるということです。運動すると言うは簡単ですが、持続が難しいところです。一人で実行できれば理想ですが難しいので、個人的意見として気のあった仲間同士でやれば持続できる可能性が高まると思います。
内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊
著者:城 繁幸 発行:(株)光文社 価格:¥952+税
 バブル崩壊後、多くの会社で売上・利益の低迷から抜け出す方法を模索する中で新しい人事給与体系として、終身雇用・年功序列給与体系から、終身雇用の崩壊・完全な能力主義主義への過渡期として成果主義が取り入れられています。
 成果主義とは半期毎に個人で事前設定した目標に対して、期の終わりにどの程度の達成出来たかを個人で成果を報告し、上司が成果を再確認して、最終的な成果を決定する。その達成度合いに応じて給料やボーナス額に反映されるという最も理想的と思われそうな制度です。
 日本の驚異的な経済成長を支えた制度として、世界的にも有名になった言葉として、終身雇用制度、年功序列賃金、OJT教育や社内教育制度の充実、独身寮の完備・社内厚生施設の充実等がありました。給与所得の増加により、社員の意識も大幅に変わり、独身寮設備や年功序列賃金が社員にも人気がなくなり、仕事のやりがいや家庭生活への重点化、趣味への投資と言った方面へ関心移っています。 このような時期に低成長が長く続きと会社としては何か新しい制度を導入しようとして、米国より成果主義を取り入れて社内活性化をはかろうとしたがいろいろな問題が発生したと言う具体的な事例本と言えます。これらの問題は決して富士通だけに限ったものではないと思います。
 人材派遣の業種が規制緩和で大幅に増加して、TVのCMでは異常な様相を呈しています。人材派遣会社に登録すれば本当にやりがいのある仕事に付けるのでしょうか。使い捨てにされる心配もあるのではないでしょうか。
国家破産以後の世界
著者:藤井厳喜 発行:(株)光文社 価格:¥952+税
 自己破産という言葉は聞いた事があるが、国家破産とはどのような状態をいうのか興味があったので、つい購入してみることになった。第二次世界大戦の敗戦国はきっと国家破産した国に間違いないだろうが、著者によると敗戦以外での国家破産を扱っている点が興味深いところである。
 現代社会の組織カテゴリーを分類すると個人、家族、企業、自治体、国家及び他国と国連のような国家を束ねるような組織がある。
 領土占領戦争を除いてこれらのカテゴリーの中で国家の破産とは他国への借金が返済不可能な状態になった時、または政治体制が不安定になり内乱状態になることを破産状態と呼んでいる。
 本書では国家破産した例として、アルゼンチンの対外債務支払い停止宣言、ソビエト連邦崩壊、韓国の通貨危機、メキシコ経済の破綻を取り上げている。一口に言えば全て経済危機または政治体制の崩壊である。日本も国債の発行額が異常に多いので、問題が起きるのではないかと著者は警告している。
 第二次世界大戦前での国家破産では国が無くなって、他国に併合された状態を言うのではないかと考える。国家は無くなるが、民族は全て虐殺されない限り残るわけです。占領国からの圧政を受け、経済的に非常に貧しい状態に於かれるのが過去の話でした。
 現代社会では他国から経済援助を受けて、あるレベルに達するまで、苦しい生活を余儀なくされる。また民族間紛争の種が残ってテロのような紛争が続く状態もあると思われる。「国家」とは何かを考えるきっかけを与えてくれる本と思います。イラクの状態を考えると改めて国家とは何かと考えさせられます。
「わがまま」のすすめ
著者:堺屋太一 発行:東京書籍 価格:¥1500+税
 団塊の世代の名付け親と言える堺屋太一さんがすすめる「わがまま」のすすめとは何だろうと題名に釣られて購入した本です。かなりよいしょした表現で、団塊の世代よ、君たちは最高だ。これまで君たちにできなかったことはないし、これからもないだろう。
 確かに子供時代の貧しさに比較したら現在の豊かさは創造できないくらい豊かになっていると思う。悲惨で資源もない敗戦国の中で数多い塊として生まれ、当時の親たちはこんなに大勢の子供たちがまともに育つのかと心配したと言う。私にも83歳になる母がまだ生きているので、今のうちに当時の話を聞かなくてはと思う次第です。どの程度の話を思い出してもらえるかだろうか。田畑が少なかったので、山を開墾して畑を作りサツマイモやジャガイモ等の食料になるものを育ていたと思うが、今その畑は山に戻っている。昔は動力付きの機械が無かったので、父は鍬、ツルハシと金棒を使って木の根っこや石を掘り出していた。今の小型の万能建設機械があれば、簡単に開墾できたし、農業機械もほとんど無かった時だ。エンジンは牛で車は車力と呼ばれる牛に引かせるものだった。農業用の最初のエンジンは脱穀機につかう重油を使った大きな弾み車の付いたディーゼル発動機だった。これで、農業生産の効率が急激に上がった。以降の農業機械の発達は他の工業発達と同様だ。農業と山仕事しかできなかった親を残して、私は36年前に東京へ出て来たのだ。貧しさにはよく耐えたものだと今でも思う。
 話を戻して、堺屋さんがすすめる「わがまま」とは好きなことして楽しんで欲しい。本当に好きなものはやっていて疲れないもの、やめると飢餓感がわくものです。と言い切っています。但し、条件としては年金と貯金で食べていける範囲で、この中には子供や孫に何か与えるとか財産残す必要は無いと言っています。しかし、お金を持っていないと子供も孫も離れていくという話もあります。、お金で子供や孫を引き付けるしかないとなるとちょっと寂しい気もしますが・・・・。
中国の大罪
著者:黄 文雄(こう・ぶんゆう)1938台湾生まれ 発行:日本文芸社 価格:¥1300+税
 最近中国の経済発展や日本と中国の関係について記述した本はたくさん出版されていると思います。台湾生まれの著者が大陸の中国をどのように見ているか、少し過激に書かれているかなと言う印象を受けた本ですが、そういう見方もあるのだなと冷静に読んで見る価値はあったのではないかと思います。
 中国は非常に長い歴史を持った国であるが、近代国家への急展開が始まったのは日中正常化とケ小平の経済特区政策からの資本主義経済導入が糸口となっている。
 最近の著しい経済発展と宇宙開発における有人飛行、軍事力の近代化政策をみていると日本のODA削減は時代の流を示している。日本がそうであったように中国も2008年の北京オリンピックまでに国家の近代化という目標達成に向けて最大限の努力をしている最中と思われるが、時々暴動が発生しているニュースも流れて来る。
 あまり急激に近代化した結果貧富の差が拡大して不平等感が大きくなっているのではないかと予想される。国内の不満を外国の問題にすり替えて不満を抑えようとしている可能性もある。このように時期に台湾生まれの中国人が大陸中国の歴史からみて、日本人は油断すると大陸中国人に負けてしまうかも知れませんよと注意を喚起している本と思われます。
 中国思想には怖いところが有りますよ。言葉としては次のようなものがあるようです。三光作戦、官僚の汚職、易姓革命、朝貢、匪賊、中国マフィア(ホンハン、チンハン、ヘイタウ)、禅譲。
 いずれにしても、中国は経済が裕福になると一党独裁の政治体制は崩壊して選挙で政治を選択する時代を迎える必要があるだろう。
虚飾の愛知万博
著者:前田栄作 発行:光文社 価格:952+税
 2005年3月25日(金)より愛知万博が始まりました。私も機会を見つけて是非行って見ようと思っていたところ、この本が目に留まりどんな経緯で愛知万博が開催され、どんな催しがあるのか事前勉強の積りで購入したものです。なんだかんだと35年前の大阪万博来場者数6400万人と比較されているようです。愛知県在住の著者が10年以上前から取材を続けてきた愛知万博の開催までの経緯が詳細に記載されています。
 私が最初に変に思ったことは長久手会場と瀬戸会場にどうして分かれているのかです。当初は瀬戸会場のみで、実施の予定が瀬戸会場予定の「海上の森」にてオオタカの巣が発見されて、自然保護か開発かの反対、賛成のグループに分かれて激論が始まり会場面積が650haから540ha最後に173ha(海上の森会場:瀬戸会場15haと青少年公園会場:長久手会場158ha)、入場予定者が4000万人から2500万人最後に1500万人となった。
 また2000年12月には大阪万博や沖縄海洋博に関わった堺屋太一さんが最高顧問として登場したが、入場予定者数見積2000万人や新たな提案が受け入れられず、わずか3ケ月で辞任という出来事も発生したりと実にいろいろなことがあったようです。
 愛知万博の新しい試みとして、ITによるHP公開やWebからの予約機能があるが、サッカーのワールドカップの予約機能で問題になったシステムの性能問題が発生して問題になっています。トヨタグループ館や冷凍マンモス観覧予約はえらい待ち時間が発生しているようです。なんの為の予約システムか分からないです。また一部のイベントへ偏り過ぎになるのはどうでしょうか。こちらが愛知万博公式サイトです。
妻への詫び状(定年後の夫婦関係)
日経マスターズ編 価格:1143+税
 本書は特定の著者の本ではなくて、日経マスターズが50、60代の夫から投稿を募集して集まった「妻への詫び状」80通、妻からの「反撃と感謝」70通、定年夫が嫌われる理由、座談会、作家の夫の例と構成されています。
 団塊の世代もあと3年で定年になります。最近の社会情勢では終身雇用も崩壊しつつあり、現実問題としては60歳定年のはずが、定年扱いにはしていますが、実質57歳当たりから肩たたきが始まっています。30数年サラリーマンをやってきた人が定年になって家に長く居る状態になるといろいろなストレスが発生します。
 妻への詫び状は普段の会話の中では話題として出しずらい「本心を手紙のかたちで書いてみたらこのようになるかな。」と言ういろんなケースが書かれています。喧嘩した時は手紙で謝ったり、最近はメールでと言うのも流行っていると聞きます。私も結婚後手紙を書いた記憶がありません。もし手紙出しても、おそらく反撃の手紙が帰って来るのではと恐れている状態です。
 日経マスターズ編者もいい話ばかり取り上げている訳では無いので自分に当てはまるのはこれではないかと思い当たるような種類のものもあります。所詮男女とは言え、他人同士が生活している訳だから何も起こらないはずがありません。昔に比べれば離婚が増えていますがお互いに我慢して暮らすことの無意味を悟り、やり直しの機会を早めに見つけ出すのが大切とのことになるのでしょう。
 定年離婚も同じ考えかどうかが気になりますが、定年離婚の場合は妻からみれば、退職金の半分が最低狙えるという有利性があるというのでしょうか。女性も賢くなっています。
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