なら燈花会(とうかえ)
                    奈良公園                  2001年8月14、15日
 開催期間は8月6日〜15日

 同じ「古都」でも京都に比べてマイナーなイメージの奈良。でも古代史のファンには「奈良好き人間」がたくさんいます。もちろんオオアマさまも呉女も大の奈良好き。それで、奈良で別に何を見るのでなくてもいい、ただ奈良にいたい。奈良の空気を吸っていたい。そう思うことがあるのです。それを昨年の夏、実現させました。ホテルを2泊とり、昼間は博物館へ行った程度で……、だいたい盆地の奈良は暑いですからねー。鹿さんたちだってグデーッとしてますよ。あとはホテルで昼寝、読書、お勉強。そのかわり気温の下がる夕方から奈良の新しい夏のイベント、「なら燈花会」を見に出かけました。

 ホテルは猿沢池近くのホテルサンルート奈良をとったので、昼間の部屋
からの眺めはこれ興福寺の五重塔です。なかなか気分がよろしい。

 「なら燈花会」は数年前に始まったばかりの新しい奈良の夏のイベントで
す。夏から秋にかけては「ライトアップ・プロムナード・なら」という市内の主
要な建造物がライトアップされるイベントが行われているのですが、8月6日
から15日までの10日間の燈花会には、それに水辺や公園のろうそくの灯り
がプラスされ、奈良公園一帯は幻想的な雰囲気になります。期間中の最後
にあたる14日、15日は奈良公園内の春日大社の中元万燈篭(まんとうろ
う)が、15日には同じく東大寺で万灯供養会(まんとうくようえ)、そして高円山(たかまどやま)の大文字の送り火まで加わり、クライマックスとなります。それらすべてを見るつもりでした。が、14日は浮見堂あたりまで行ったものの春日大社まではたどりつきませんでした。

 さて、いよいよ15日の夜、7時。猿沢池から歩きはじめます。

猿沢池から見たライトアップされた興福寺の五重塔
 あらかじめ池のほとりに並べられたろうそくの一つ一つに、ボランティアの方
によって火が入れられていきます。あとで知ったことには「一客一燈」といっ
て毎日6時に新公会堂前の受付に行けば、先着500人にはろうそくに火を灯
させてくれるのだそうです。所々に設けられている売店では燈花会のうちわや
絵葉書、ろうそくなどが売られていますが、その売り上げが翌年の祭りの運営
に充てられるそうです。ふと見るとその売店に立っている人がどこかで見かけ
た人だなと思うと、ホテルのフロントの人だったり。町の人たちによって手作り
されているイベントなのです。
 猿沢池周辺、浮雲園地、浮見堂、浅茅ヶ原の四つのエリアが燈花会の会場になり、ずらりとろうそくが灯ります。足元だけでなくて、浅茅ヶ原では竹と灯りのオブジェみたいなものも並んでいます。このあたりで日によってはライブコンサートなども行われるようです。

 奈良公園は広いし、この日は人も多いし、一方通行の通路もあるし……。やっと東大寺参堂にたどりついたものの、そこには行列! しかたない、並びましょう。
東大寺万灯供養会  ふだん大仏殿には回廊の端にある入り口から
しか入れませんが、この夜は正面の中門から入ることができます。し
かも無料。普通は閉まっている観相窓(かんそうまど、大仏殿のちょう
ど大仏の顔の前にある窓)も開かれて、中門から入ったその瞬間、
大仏殿の中で透けるように、ろうそくの火に浮かびあがる大仏の姿が
目に飛びこんできて、そのあまりの美しさに息をのみます。しかもその
前にはずらりと並んだ灯篭……。灯篭の一つ一つには奉納した人の
名前と願い事が書かれています。万灯供養会というのは、この灯火を
仏さまに供えて懺悔滅罪するための法会なんだそうですが、この東大
寺での歴史は意外に新しく、昭和60年に始められたそうです。ちなみ
に13日と14日も夜間拝観が行われ観相窓も開けられるのだそうです
が、こちらは有料で灯篭も並ばないそうです。
 大仏殿に入ると蓮華坐の周囲に灯されたろうそくに照らされた大仏の美しさと、僧侶の読経
の声と、ごった返す人とでかなり高揚してしまいました。

さて、心を残しつつも大仏殿を出て、浮雲園地へ。ここはだだっ広い広場にずらりとろうそくが並ぶエリア。人が少なかったらもっと雰囲気が出るのだろうけれど……。

 この時点ですでに8時過ぎ。高円山の大文字は8時点火ですから、ちょうど燃えている時間なのですが、東大寺や浮雲園地からは残念ながら見えませんでした。浮見堂や飛火野あたりがよく見えると思うのですが、これから行っても多分消えているだろうとあきらめました。大文字の送り火はお盆でお迎えし
た精霊を送る行事として特に京都のものが有名ですが、その起源も平安時代から江戸時代ま
で諸説あるようです。奈良の高円山の送り火は今から40年ほど前に始められたそうですが
「大」という字の大きさは日本一だとか。
 それから、この日の行事のうち、いちばん著名なのは春日大社の万燈篭でしょう。800年前
から現代にいたるまでに寄進された何千という石燈篭と釣燈篭すべてに灯りが灯される伝統
行事で節分にも行われます。浮雲園地を越えたところが春日大社参堂の入り口になります
が、弱っちい二人はすでにかなりエネルギーを消耗していました。オオアマさまなんて夜の灯り
を見ると眠くなるタイプですから、なおさら……。
 こんなときの二人の決まり文句、「また、来ましょう」。

 こうして二人の旅は永遠に続く……。


 今回は夜のイベントということもあり、写真もあまりよく撮れなかったし、かなり中途半端なレポートになってしまいましたが、呉女としては愛する奈良を宣伝したかったのです。ひと昔前の奈良は何もしなくても観光客は来るせいか、観光客を誘致するとか迎えるという姿勢がちょっと足りなかったような気がするのです。でも最近の奈良は変わってきました。その姿勢の一つの表れがこのイベントだと思います。まだまだ観光客にちょうどいい飲食店が少ないなど観光地としての課題はいろいろあるように思いますが、何といっても日本が誇る世界遺産の町ですから、もっとたくさんの人に訪れてもらって、どんどんいい町になってもらいたいな〜、なんて願いを込めました。ガンバレ!奈良!! 

(2002年7月記)

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