きみからは緑の風の薫りがした。
匂いたつ花々のあでやかさとは異質の、心魅かれるなにかをきみは放っていた。
それは風に吹かれて擦れ合う森の下草のようであり。
芝生に寝転び緑と陽光を身に受けたあの一瞬のようであり。
羽化後間もない、しわくちゃな真珠色のシフォンにも似た輝く羽根を、ゆるく伸ばす蝶のようであり。
いつのまにか僕は欲していた。緑の薫りを。暖かい陽光を。
それらで僕の心を充満させるきみを。
きみの羽根にそよぐ風から両手できみを守り、僕自身がきみをそよがす風になりたくて。
きみが封印してしまったその真珠の輝きを引き出したかった。
僕自身のために。
許して貰えるだろうか。
心を伝えても…微笑みを向けてくれるだろうか。
風は強すぎても弱すぎても不快なものだから、僕はきみの前で真実を告げられずにいる。
まだ待たなければいけないと、かすかな風の匂いが教えてくれる。
そう、せめてきみのシフォンの羽根が乾くまでは―――――
|