結城昌治

軍旗はためく下に      

軍旗はためく下に 2008年12月17日(水)
 第二次大戦末期、凄惨きわまる最前線で軍規違反として処刑された兵士たちの真実を探ろうとする作品。 「敵前逃亡・奔敵」は捕虜になり脱走して帰って死刑になった小松伍長、「従軍免脱」はナイフで薬指を切って血書を書いて将校たちの紊乱を直訴して、逆に処刑された矢部上等兵、「司令官逃避」は敵の攻撃に一時退避したのを司令官逃避とされた杉沢中隊長、「敵前党与逃亡」は斬込み行ったきり帰らず、敵前党与逃亡により死刑という記録が残った馬淵軍曹、「上官殺害」は暴力をふるう小隊長を殺害し、終戦後捕虜収容所で死刑になった部下たち。当時の部隊関係者に聞いて歩くが、実際には現場にいず伝聞に過ぎなかったり、記憶が曖昧だったり、あるいは故意に嘘を言っているのか、結局真相が明らかになることはない。
 軍隊の刑法もめちゃくちゃだが、武器もろくになく病気に侵され食料を探すだけの戦場も悲惨だ。直木賞受賞作。