結城真一郎

名もなき星の哀歌      

名もなき星の哀歌 2022年9月17日(土)
 大学三年の春、講義が終わると漫画を読んでいた良平に、漫画好きだという男が声をかけてきた。漫画家を目指しているという健太は、偶然良平と同じアパートだった。二人を尾行している男がいて、記憶を売買する店で働いているジュンといい、仕事に誘われる。社会人になった後も裏稼業としてその店で働いている二人は、渋谷の駅前で人だかりの中で歌っている星名という女性に出会った。「スターダスト・ナイト」という歌になぜか涙を流し、流浪の歌姫と呼ばれるこの女性のことを調べ始める。
 二人の出会い、ジュンとの出会い、星名との出会い、すべてに秘密が隠されていた。新潮ミステリー大賞受賞作。作者は東大法学部卒で、この前読んだ辻堂ゆめの同級生。彼女の受賞に刺激されて、作家になることにしたのだという。 SF的な状況設定とか、歌姫が主要人物であることなど、発想的に似ているところがある。どちらもおもしろかった。