結城真一郎

名もなき星の哀歌 #真相をお話しします    

名もなき星の哀歌 2022年9月17日(土)
 大学三年の春、講義が終わると漫画を読んでいた良平に、漫画好きだという男が声をかけてきた。漫画家を目指しているという健太は、偶然良平と同じアパートだった。二人を尾行している男がいて、記憶を売買する店で働いているジュンといい、仕事に誘われる。社会人になった後も裏稼業としてその店で働いている二人は、渋谷の駅前で人だかりの中で歌っている星名という女性に出会った。「スターダスト・ナイト」という歌になぜか涙を流し、流浪の歌姫と呼ばれるこの女性のことを調べ始める。
 二人の出会い、ジュンとの出会い、星名との出会い、すべてに秘密が隠されていた。新潮ミステリー大賞受賞作。作者は東大法学部卒で、この前読んだ辻堂ゆめの同級生。彼女の受賞に刺激されて、作家になることにしたのだという。 SF的な状況設定とか、歌姫が主要人物であることなど、発想的に似ているところがある。どちらもおもしろかった。

#真相をお話しします 2024年8月23日(金)
 「惨者面談」:アルバイトの家庭教師の営業で訪ねると、ゴ手袋をした母親は家の中を見せたがらず難癖つけて断るが、子供は帰らないでと言う。体験授業をすると、子供はどんな問題にも『110』と答えた。
 「ヤリモク」:マッチングアプリで自分の娘と似た女性と会う。最近アプリで出会った女の子の連続殺人事件が起こっていた。うまくいって部屋まで行ってシャワーを浴びて出ると、男がいた。
 「パンドラ」:長い妊活の末に娘を授かった時、人助けと思って妻に了解を得て精子提供に応じた。十数年経って、精子提供で生まれた娘から会いたいとメールが入った。精子提供には特殊な事情があった。
 「三角奸計」:大学時代の仲間とリモート飲み会をすることになった。すると、一人がもう一人を今から殺しに行くと自分だけにメッセージを送ってきた。自分の婚約者と不倫しているのだと言う。
 「#拡散希望」:珠穆朗馬(チョモランマ)、砂鉄、口紅(ルージュ)の3人は、東京生まれで匁島へ移住してきた。島でもう一人の同級生が地元の凛子。ネットもゲームも親から禁止されていたが、ある日凛子がiPhoneを買ってもらってYou Tuberにならない?と言いだした。知らない男性が撮影しようと話しかけてきて、逃げると、その後ニュースで殺されていた。そこから、凛子や島の人の態度が変わってしまった。
 「#拡散希望」は日本推理作家協会賞短編部門受賞作。意外な結末でおもしろいと言えばおもしろいが、後味が良くないし、全体に品がない。悪趣味だ。