行成薫

名も無き世界のエンドロール      

名も無き世界のエンドロール 2015年4月20日(月)
 マコトと俺は幼馴染で、二人とも両親がいなかった。マコトがドッキリを仕掛けるのが生き甲斐で、ビビリ屋の俺はいつもひっかかっていた。小学五年の時、金髪の女の子ヨッチが転校してきた。彼女も両親がいなくて、いつも三人でつるむようになった。二十歳になった俺とマコトは同じ車の板金塗装工場で働いていた。ある日、若い美しい、生意気なリサという女が数千万円の高級車を内緒で修理してほしいと言ってきた。犬を轢いてしまったという。マコトは金があればリサに近づけるかなと言って、姿を消した。半年後俺も首になって、社長に紹介された会社へ行くと裏稼業の会社で、マコトの情報が集めてあった。
 三十歳の現在から過去へ何度も行き来するので少しわかりにくい。金持ちで裏の権力を持つ男の娘で、美人でモデルの女に近づくための作戦かと思っていると、そのうちヨッチが登場しないことに気が付く。おそらく死んだんだろうと思う。そして最後に真相が明らかになり、過去の断片がうまくはまっていく。ミステリーとしても青春小説としてもおもしろかった。小説すばる新人賞受賞作。