夕木春央

絞首商会      

絞首商会 2023年5月2日 (火)
 明治開化から五十年余り過ぎた東京の武家屋敷に建つ、二月前に急逝した村山梶太郎氏の邸宅の庭で、居住している法医学の大家である村山鼓堂博士の屍体が発見された。梶太郎氏の姪で同居している水上淑子婦人は、かつて村山邸に泥棒に入った蓮野を訪ね、犯人探しを依頼する。蓮野は、帝大法科大学を出て銀行に五ヵ月務めて辞めて、一時期泥棒をしていた。残った手紙から、村山梶太郎氏と鼓堂博士には、『絞首商会』という無政府主義者の秘密結社との関係が疑われた。そして、村山家と数十年来の付き合いのある白城、鼓堂博士の妹と結婚した宇津木、数年前から交友のある生島の三人が村山邸に集まって、水上婦人と事件について話し合うのだった。蓮野の面倒を見ている画家の井口が、近所に住んでいることもあって、蓮野の依頼で調査に歩く。
 蓮野の超能力的な語学力、記憶力、推理力。登場人物達が抱える秘密、謎の秘密結社、少女の冒険活劇、そして思いもかけない犯行の動機。複雑だがおもしろかった。メフィスト賞受賞作。