吉永南央

萩を揺らす雨      

萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ 2011年11月29日 (火)
 関東の大観音像が見下ろす街の古民家風のコーヒー豆と食器と試飲コーナーのある「小蔵屋」の主・草は70過ぎのおばあさん。店に集まるお客たちの会話から事件に気づいたり、
 「紅雲町のお草」:お客の会話から、おばあさんが虐待されているのではと気がかりになり、夜そのマンションの様子をうかがうが、警官に徘徊と思われてしまう。
 「クワバラ、クワバラ」:小学校時代のいじめっ子「クワバラ」が、未払いを残したまま行方が知れなくなった。
 「0と1の間」:草がパソコンを習っている白石がやつれてきて、心配している友人に話を聞くと援助交際をしているらしい。
 「悪い男」:お客の高校時代の友人で、金を借りまくって姿をくらました男が町に再び現れたが、強盗事件の犯人として逮捕された。友人が見かけてアリバイはあるのに、本人は否定している。
 「萩を揺らす雨」:幼なじみで代議士の大谷から、長年の愛人がなくなったので、葬儀に出て息子を連れてくるように頼まれる。大谷は草が思いを抱いている相手だった。
 居ながらにして謎を解くわけでも、事件を解決するわけでもなく、どちらかと言えば事件に巻き込まれていつのまにか解決していくという感じで、お婆ちゃん探偵というよりはお婆ちゃんハードボイルドだ。オール読物推理小説新人賞受賞作。