吉目木晴彦

寂寥郊野      

寂寥郊野 2003年6月24日(火)
 一時期、アメリカで生活する日本人をテーマにした小説がブームになったことがあった。この作品も、いわゆる戦争花嫁がアメリカの地方都市で生きてきてアルツハイマー病に冒されていく様子が描かれている。その中では、ぼけていくことに対するアメリカ人と日本人の考え方の違いとか、アメリカの地域社会とかが、きわめてリアルに鋭く書かれている。「うわさ」は新興の分譲団地と賃貸団地の住民同士の対立、夫婦の責任のあり方といったことから、心が崩壊していく女性が描かれている。
 この作家は、知識が豊富なのか取材が綿密なのかはわからないが、非常にリアリティのあるドラマを作るのがうまいようだ。ただ、個人的な趣味から言うと、それほど興味深いテーマでもない。芥川賞受賞作で、映画化されているそうだが、記憶にはない。