米原万里

オリガ・モリソヴナの反語法    

オリガ・モリソヴナの反語法 2006年2月10日(金)
 1960年、10歳の志麻はチェコのソビエト大使館付属学校へ転入する。そこでは週二度のダンスの授業が楽しみだった。オリガ・モリソヴナというどうみても70は超えている女教師の、褒めてけなす反語法と痛烈な罵倒言葉が魅力だった。ソビエト連邦が崩壊した後の1992年、志麻はロシアを訪れ、当時の学校の資料を請求して、オリガ・モリソヴナについて調べ始める。
 資料館の係がかつての親友カーチャの同級生だったことがわかって、親友との再会も果たし、当時の体験が綴られた手記とその著者や劇場関係者、バレエ学校の生徒の協力で、オリガ・モリソヴナとその姉妹のようだったフランス語教師のエレオノーラ・ミハイロヴナの正体や過酷な体験が明らかになっていく。
  学校や生徒が生き生きと描かれていて楽しいし、ミステリー的な興味も引いて、革命前後の事情やいろいろな人物が一つにつながっていくのがうまいし、おもしろかった。実際の体験に根ざしているとはいえ、教師の過去などはフィクションだそうだ。ドゥマゴ文学賞受賞作。