安田依央

たぶらかし      

たぶらかし 2012年6月5日(火)
 冬堂マキは、ORコーポレーション所属の「役者」。といっても、依頼を受けた客になりすまして、その人を演じるのが仕事。主宰する劇団を解散し、就職活動を始めて、住む部屋も食う米もなくなって、「役者募集」の貼り紙を見て訪ねたのだった。斎場で棺桶の中の死体になったり、新婚の妻になって夫の親戚に顔を見せたり、セレブな社長業の母として子供の学校へ行ったりする。そして、ORコーポレーションは、警察や政財界にもコネクションがあるらしい。ある時、客を装った男が接触してくる。「都市伝説、だからですよ」と言って人込みに紛れ込んでいった。
 テレビドラマ化された小説すばる新人賞受賞作。 今ほんとうに自分を生きているんだろうか、それとも何かの役を演じているのだろうか。おもしろかった。テレビドラマは設定を変えているらしい。結果的に見なくて良かった。