矢野隆

蛇衆      

蛇衆 2012年11月11日(日)
 室町末期、戦の折急場にそろえる兵である荒喰で、蛇衆という集団があった。徒手で倒す朽縄をリーダーに、金棒を使う僧形の鬼戒坊、弓を使う孫兵衛、手裏剣を使う元忍びの無明次、長大な太刀を操る女の夕鈴、棒の両端に刃を付けた槍を振り回す若者十郎太、そして雇主と交渉する商人の宗衛門。彼らは、かつて巫女の予言に己の息子を殺したという鷲尾家に雇われることになる。しかし、鷲尾家の家臣堂守嘉近が本人も覚えていない朽縄の幼いころを知っていたことから、思いがけない方向へ動いていく。
 ほとんど一文一行の文体で、戦闘シーンはまさに劇画調。しかし、登場人物それぞれの背景は描かれているし、どんでん返しのようなものもあっておもしろかった。小説すばる新人賞受賞作。