柳広司

贋作『坊ちゃん』殺人事件 ジョーカー・ゲーム    

贋作『坊ちゃん』殺人事件 2005年6月27日(月)
 教師を辞めて四国から帰って3年。街を歩いているとばったり山嵐に会う。赤シャツと野ダイコを殴って帰ったその日、赤シャツが自殺したと知らされ、真相解明のため再び四国へ向かうことになる。地元の新聞記者をたずねると、野ダイコは気が狂って入院していた。捜査を続けるうち、赤シャツが社会主義派、山嵐が自由民権派で、坊ちゃん一人が知らぬうちに町中が対立していたことがわかってくる。そして、うらなりとマドンナ、寄宿舎でのバッタ事件などの出来事の背景が明らかになり、赤シャツの自殺の真相が見えてくる。
 夏目漱石の「坊ちゃん」を舞台に殺人事件を設定し、有名なエピソードを自由民権運動と社会主義運動の対立で説明するという、ヒネリの効いたパスティッシュ・タイプのミステリー。おもしろかった。もう一度「坊ちゃん」も読みたくなった。 朝日新人文学賞受賞作。

ジョーカー・ゲーム 2011年8月4日(木)
 かつて優秀なスパイだった結城中佐の発案で開設された情報勤務要員養成所−D機関、奇妙奇天烈な試験に平然と答えて選ばれた者たちは、皆偽の名前と経歴を与えられ、多岐にわたる訓練を受けた。結城中佐は、スパイは「見えない存在」となって、孤独と不安の中で生き、その存在を知られるのは任務に失敗した時、そして殺人と自決は最悪の選択肢だという。
 「ジョーカー・ゲーム」など5つの短編からなるが、任務が「スパイ大作戦」のようにスパッと決まるのは痛快だ。吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞受賞作。