山下澄人

しんせかい      

しんせかい 2020年2月27日(木)
 新聞の記事で、俳優と脚本家をめざすものを育てるというのに、遠く離れたところへ行く、費用がかからないというのにひかれて、応募して試験を受けたら受かった。船で海を渡り、車に揺られて【谷】に着いて、一期生に迎えられてたくさんのテレビドラマや映画の脚本を書いている【先生】の授業を受け、作業に従事する生活に入っていく。
 倉本聰の富良野塾の体験記のようなものでもあり、青春群像劇でもある。作者はその後劇団を主宰し、作家になっているのだから、一応役には立ったのだろう。主人公は、前途の未知を連想させるかのようにナイーブに描かれているが、作者自身のボーっとした性格なのだろう。何でこれが芥川賞なのかは理解できないが、おもしろいことはおもしろかった。