山本昌代

緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道    

緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道 2005年6月15日(水)
 「バリリロロニ四肢機能全廃」という難病で下半身を動かせない鱈子さんは、一日の大半を部屋のコタツで過ごす。姉の可李子が話し相手になって、たわいもない会話を交わす。父の明氏は定年退職後、カルチャーセンターの文学講座を受講したり、全日本歩こう協会に入会して休日朝早くウォーキングの会に出かけていく。母親の弥生さんはメニエル病の持病があり、疲れが重なると倒れてしまう。鱈子さんは囲碁が好きで、小林光一ファンだったりする。そのうち、鱈子さんがプロテスタントで詩を書いていて、可李子も小説を書いているということが明らかになったりする。そんなちょっと風変わり な家族の日常が軽く淡々と続き、明氏の直腸腫瘍という大きな出来事もなんということもなく描かれ、不吉な夢で終わる。北斎父娘を描いたデビュー作「応為坦坦録」とはまったく作風の異なる、不思議な味わいの小説。三島賞受賞作。