山之口洋

オルガニスト      

オルガニスト 2004年1月16日(金)
 ドイツ・ニュルンベルク音楽大学のバイオリン科助教授ヴェルナーのもとに、1枚のミニディスクがもたらされる。そこに録音してあったライニヒというオルガニストの演奏は、ある人物を思い出させた。その人は 、学生時代寮の同じ部屋で過ごした天才的なオルガニスト・ヨーゼフ。ヴェルガーの運転する車に同乗し、事故で半身不随となり、ある日病院から姿を消していた。
 読み進むうちに殺人事件が起こり、これはサイエンス・ミステリーかと思うと、だいたいの事情は読めてくる。しかし、この作品はそういった謎解きを求めているわけではない。「音楽になりたい」というヨーゼフの願いを、結果的にかなえることになるラストは凄絶で悲しい。第10回ファンタジーノベル受賞作である。
 バッハのオルガン曲がモチーフとなっているので、ヴァルヒャーの演奏するオルガン曲集を聴きながら読んで、今週1週間はバッハのオルガン漬けであった。