山本兼一

利休にたずねよ      

利休にたずねよ 2014年7月8日(火)
 天正十九年二月、千利休は秀吉の不興を買い、切腹を申し付けられた。命乞いすれば許されるということだったが、利休は拒んだ。利休の完璧な美意識は、時に傲岸とも受け取られていた。利休が肌身離さず持っている緑釉の香合は、十九の時出会い別れた高麗の高貴で美しい女性の形見だ。誰もがそのいわれを知ろうとし、欲したが、利休は頑なに明かさなかった。
 利休切腹の日から、利休の美意識を決定づけた女性との出会いと別れの若き日までさかのぼる、珍しい連作短編形式だ。一話完結で、どの章も結局利休ってすごいよねで終わるので、やや軽い印象を受ける。謎解きミステリーのような雰囲気もあって、おもしろいことはおもしろい。直木賞受賞作。