山田宗樹

百年法      

百年法 2015年7月13日 (月)
 リョコウバトの群れの中から不老化した個体が発見され、ヒトへの感染力を持つヒト老化ウィルス(HAV)が発明され、戦後アメリカに占領されていた日本にも導入された。しかし、ヒトが永遠に生き続ければ大きな問題が生じるので、生存制限法が必要とされ、百年法が成立した。長年志向が留保されていた日本は国力が疲弊してきており、内務省では準備室を作って施行を目指していた。しかし、自らの命を終わらせる法律に政府も議会も手をこまねて、国民投票に持ち込まれて否決されてしまった。準備室室長だった遊佐は、百年法を支持した野党党首に近づき、百年法の成立を目指す。
 加入すれば一生仕事と住居が保証されるユニオンという制度、爆弾テロの犯人とされるテロリストの正体、百年法による処置から逃れる拒否者の組織、そして思いもかけない、というかSFでは常套手段の展開で結末を迎える。ミステリーの要素もあるが、どちらかというとSFという感じだ。日本推理作家協会賞受賞作。