渡辺容子

左手に告げるなかれ      

左手に告げるなかれ 2006年10月30日(月)
 スーパーで万引者を捕捉する保安士八木薔子を刑事が訪れた。殺人事件の容疑者にされたのだ。殺されたのは、3年前勤めていた会社の不倫相手木島の妻だった。ショックで万引を捕捉できなくなった八木を、指令長の坂東は事件のあった桜美台のスーパーに移動させ、自ら探ってみるように促す。八木は木島と再会して調査の打ち合わせをし、昼休み、勤務後の時間を利用して、木島のマンションの管理人、目撃者、いさかいのあった住民に聞き込みを始める。ある夜尾行に気づいて捕まえると、依頼を受けて事件を捜査している探偵だった。怪しげな探偵と情報を交換したり一緒に動いたりしているうち、あるコンビニの地区担当のスーパーバイザーが4人続けて 死んでいることがわかってくる。
 保安士の主人公が万引きで捕まる冒頭からして意外性があっておもしろいし、八木薔子のキャラクターも魅力的だ。「みぎ手」というダイイングメッセージはお約束どおりのものだが、「左手に告げるなかれ」が事件の鍵をにぎってい て、どんでん返しが何度かあって、その真相が分かるのは最後のほう。犯行の動機もまったく思いもよらないものだった。江戸川乱歩賞受賞作。