宇佐見りん

推し、燃ゆ かか    

推し、燃ゆ 2023年12月2日( 土)
 高校生のあかりは、生きるのに力を振り絞っても意思と肉体が途切れてしまう。病院で二つの診断名をもらったが、病院に通うのも億劫になった。そんなあかりは、推しを推すときだけ重さから逃れられる。アイドルグループ「まざま座」のメンバー、上野真幸。アルバイト代はすべてライブとグッズに使い、推しを解釈してブログに公開する。推しがファンを殴って炎上し、あかねは成績不良で中退し、家族から見放されて亡くなった祖母の家で一人暮らしを始める。就職活動はできず、バイトもクビになる。家に帰ると散らかったものが老廃物のように溜まっている。なぜ普通に生活できないのだろう。
 推しブームの中で話題になった芥川賞受賞作だが、決して軽くはない。
 「ずっと、生まれたときから今までずっと、自分の肉が重たくてうっとうしかった。…滅茶苦茶になってしまったと思いたくないから、自分から、滅茶苦茶にしてしまいたかった。…膝をつき、頭を垂れて、お骨をひろうみたいに丁寧に、自分が床に散らした綿棒をひろった。綿棒をひろい終えても…その先に長い道のりが見える。這いつくばりながら、これがあたしの生きる姿勢だと思う。」

かか 2024年11月5日( 火)
 浪人生のうーちゃんのかかは、ばばから愛されず、ととが家を出て、心を病んでいた。そのかかが入院して手術を受ける前日、うーちゃんは那智参詣の旅に出る。
 ストーリーはこれだけ。文章は「かか語」で、おまい(弟のみっくん)にあてた手紙になっている。芥川賞を受賞した「推し、燃ゆ」は「推しブーム」で話題になったが、実際は発達障害の少女の孤独を描いたものだった。この作品でも大衆演劇の役者の「推しSNS」が描かれているが、作品は毒親の母との共依存を描いているとも言えるかもしれない。「かか語」の文体が独特の感覚を表現している。文藝賞、三島賞受賞作。