宇佐見りん

推し、燃ゆ      

推し、燃ゆ 2023年12月2日( 土)
 高校生のあかりは、生きるのに力を振り絞っても意思と肉体が途切れてしまう。病院で二つの診断名をもらったが、病院に通うのも億劫になった。そんなあかりは、推しを推すときだけ重さから逃れられる。アイドルグループ「まざま座」のメンバー、上野真幸。アルバイト代はすべてライブとグッズに使い、推しを解釈してブログに公開する。推しがファンを殴って炎上し、あかねは成績不良で中退し、家族から見放されて亡くなった祖母の家で一人暮らしを始める。就職活動はできず、バイトもクビになる。家に帰ると散らかったものが老廃物のように溜まっている。なぜ普通に生活できないのだろう。
 推しブームの中で話題になった芥川賞受賞作だが、決して軽くはない。
 「ずっと、生まれたときから今までずっと、自分の肉が重たくてうっとうしかった。…滅茶苦茶になってしまったと思いたくないから、自分から、滅茶苦茶にしてしまいたかった。…膝をつき、頭を垂れて、お骨をひろうみたいに丁寧に、自分が床に散らした綿棒をひろった。綿棒をひろい終えても…その先に長い道のりが見える。這いつくばりながら、これがあたしの生きる姿勢だと思う。」