魚住陽子

奇術師の家      

奇術師の家 2003年3月19日(水)
 この文庫本は1年近く、かばんの中で眠っていた。月曜日ふと思い立って読み始めたのだ。女性作家特有の女性の情念や心理を描いているのだが、家、調度、植物、料理などへのセンスの細やかさや、会話の言葉遣いの上品さがあって、落ち着いた味わいがある。趣味のいい作家だ。朝日新人文学賞受賞作。芥川賞や三島賞の候補になって落選しているようだが、革新性やパンチ力に欠ける部分があるのかもしれない。そのうち、長編小説であっさり女流文学賞でもとってしまうのだろう。