宇江佐真理

深川恋物語      

深川恋物語 2006年4月12日(水)
 江戸・深川を舞台にした6編の恋物語。
 「下駄屋おけい」は、大店の娘が、祝言が決まったものの幼馴染の下駄屋を忘れられないという話で、最後の一文が効いている。「がたくり橋は渡らない」は、花火職人の激しい思いとどうにもならない事情の行方。「凧、凧、揚がれ」は、息子が奉公する大店の病弱な娘と凧職人の心のふれあい。「さびしい水音」は、絵が好きな妻と大工の夫の心のすれ違い。「仙台掘」もやはり、病弱な大店の娘と奉公人と、取引先の料亭の兄妹との葛藤と悲劇的な結末。「狐拳」は、夜遊びに明け暮れる義理の息子と吉原の芸姑と母親の不思議な因縁話。
 ハッピーエンドもあるが、切ない結末のほうが多い。結構おもしろかった。吉川英治文学新人賞受賞作。