辻仁成 |
海峡の光 |
海峡の光 2004年2月27日(金) |
廃航が決まっている青函連絡船を辞めて、函館の刑務所の看守を勤めている主人公の前に、小学生時代の同級生が現れる。かつて、優等生の仮面をかぶって狡猾にいじめていた男は、突然暴力をふるって受刑者となっていた。 かつていじめていた男を逆に監視する立場になる。男は刑務所でも模範囚を装いながら、いじめの対象を見つけ出し、受刑者たちを支配し始める。夜の街でふと出くわしたかつての受刑者は、「俺らは暫くお務めしたらあそこから出られるけどもさ、おやっさんたちは大変ですよね。一生あそこから出られないんすからねぇ」と言った。そして、男を監視するうち、自分こそがこの男に操られているのではないかという気がしてくるのだった。 「世の中の外側にいられることの自由って分かるかい?」と言うこの男の存在感がおもしろい。意図的なのかどうかはわからないが、古臭い文体と紋切り型の言葉遣いが多少気になった。刑務所の雰囲気を表そうとしているのかもしれない。芥川賞受賞作。 |