外村繁

澪標・落日の光景      

澪標・落日の光景 2003年8月7日(木)
 「夢幻泡影」は脳軟化症の妻の看護とその死を描いた作品。「澪標」は、前半は作中の<私>の幼少時からの「性欲史」、後半は後妻の闘病記。「落日の光景」と「日を愛しむ」はその続きで、後妻の闘病記。
 外村繁は、梶井基次郎と同窓で瀧井孝作などと同時期に活動した私小説作家だそうだ。作家や芸術家が人格者である必要はないのかもしれないが、作中の<私>の人生観や人間観ははっきり言って浅薄だし、文章表現も古風なだけでうまいとは思えない。何より、露悪趣味は醜悪だ。私小説論ついてあれこれ書いたらきりがないが、文学としてレベルが高いとは思えない。文学史の中で位置づけがなされて、国文学の研究対象とはなるのであろうが、単純に読み物としてみたら、マンガでも読んでいたほうがましだと思う。文学の世界には「性」にこだわる傾向があるということは前も書いたが、こんな作品が読売文学賞を受賞するような社会では、いい年した人間のセクハラや痴漢がなくなるわけがない。