戸松淳矩

剣と薔薇の夏      

剣と薔薇の夏 2015年11月3日(火)
 一八六〇年のニューヨーク、日本からの使節団の歓迎に沸く新興の経済都市で、不思議な殺人事件が起こっていた。死体に細工がされ、聖書のページが置かれ、そして被害者は使節団歓迎の関係者だった。そして、当時のアメリカは奴隷制度や経済政策で南北対立が先鋭化しており、奴隷を逃す地下ルートが存在し、それを狙う奴隷狩りが暗躍していた。週刊紙アトランティック・レビュー社のベテラン記者ウィリアム・ダロウは依頼を受けて挿絵画家のフレーリと一緒に取材を始める。
 当時の政局、都市、場面の描写が詳細過ぎてなかなかストーリーが進行しないのだが、それはそれで興味深くもあり、当時の共和党と民主党が現在と全く逆の立場をとっていたということも初めて知った。盛りだくさんで何が焦点がつかみにくいが、何となくそっちの方向かという感じもしてくる。日本推理作家協会賞受賞作。