砥上裕將

線は、僕を描く      

線は、僕を描く 2022年12月4日( 日)
 両親を交通事故で亡くして以来心を閉ざしていた青山霜介だが、大学で友人になった古前君から頼まれた展示場の飾りつけのアルバイトで、偶然水墨画の大家、篠田湖山と出会い、なぜか気に入られて内弟子になる。作業監督だと思っていた西濱さんは、門下生の水墨画家だった。そして、湖山の孫でやはり水墨画家の千瑛と湖山賞を争うことになる。お手本をまねて落書きのようなものを描き、墨をすることから教わり、霜介は水墨画に打ち込んでいく。
 芸術小説のような、成長物語のような作品だが、水墨画の世界を初めて知ったような気がして、登場人物のキャラクターも興味深くて、おもしろかった。扉絵に植物の絵があって、作者の名前があるのでオヤッと思ったが、作者は作品の主人公と同じように、大学で開催された揮毫会がきっかけで水墨画を始めたのだそうだ。なぜかメフィスト賞受賞作。最近映画化もされたそうだ。