藤堂志津子 |
秋の猫 |
秋の猫 2006年1月12日(木) |
「秋の猫」:三十過ぎて結婚を夢見て三年付き合ってきた男の二度目の浮気を知って、ついに男に愛想をつかして猫を飼い始める。だが、2匹もらったうち
の1匹がどうしてもなつかない。(この子とはもうやっていけないかもしれない)と泣いてしまった。 「幸運の犬」:デザイナーとして成功している夫との離婚がもめているのは、夫が幸運をもたらしたと信じている犬をどちらが引き取るかということ。まさかと思って、犬をあきらめる代わり5千万欲しいと持ち出したら、本当に5千万出してしまった。 「ドルフィン・ハウス」:三十過ぎて7つ目の職場。仕事のレベルアップも夢見るような結婚もできない。そんなある日、壁に変な絵を描いたアパートの所有者と知り合い、チャンスだと思うが、どうも飼われている猫がじゃまでしょうがない。 「病む犬」:念願の超小型犬を買ったのはいいけれど、病弱でほとんど毎日病院通い。人間の健康保険がきかないので蓄えも底をついてきた。そこへ愛犬を亡くしたばかりという男性が声をかけてきた。両親は自営業だし、いい車に乗っている。 「公園まで」:離婚し、両親をあいついで亡くし、愛犬もなくし、2匹目の犬と公園を散歩していると男性から声をかけられた。以前飼っていた犬をお婿さんに借りたことがあるということだった。お互い離婚し、親と死別し、ペットと暮らしている同士。 30代女性のペットへの偏愛と、結婚への渇望と企みが描かれているのだが、共感しつつ笑っちゃうような作品だろうか。柴田錬三郎賞受賞作。 |