千早茜

魚神 あとかた しろがねの葉  

魚神 2012年7月7日(土)
 白亜とスケキヨの姉弟は婆に拾われて育った。ヘドロの臭いに満ち溢れた島は、本土から隔離された遊女屋の島だった。スケキヨは、獏が住むという祠で見つけた書物から薬を作るようになり、白亜より先に売られていった。白亜もやがて廓に売られ、名を轟かせる遊女となっていった。伝説の遊女と同じ名を持つ白亜がその地位を得たのは、一つには誰かが届けてくれる香と丸薬の匂いのせいでもあった。
 夢を見ることのない、そしてデンキのない島、退廃的な白亜と怜悧なスケキヨ、倒置的な文体で独特の世界を描いている。小説すばる新人賞、泉鏡花文学賞受賞作。

あとかた 2016年7月7日(木)
 「ほむら」:五年一緒に暮らしてきた徹也との結婚が決まった私は、知人から「近付かないほうがいいよ」と紹介された男と、誘われるままに付き合い始めた。別れて半年ほど経った頃、その男が死んだと知らされた。
 つまらない不倫話かと思ったら、その後物語がつながっていく。「てがた」は会社の屋上から飛び降り自殺したその男の部下が抱く男への共感。「ゆびわ」はその部下の妻がおぼれる不倫、「やけど」は居候させてもらっていた男が自殺して、前の章の不倫相手が住んでいるアパートの隣の部屋に住む高校時代の友人のところにいる女の子、「うろこ」はその大学生、「ねいろ」は女の子が慕っているフィドル弾きの女性の恋愛。
 少女と学生が主人公の部分が良かった。島清恋愛文学賞受賞作。

しろがねの葉 2026年3月1日(日)
 ウメは夜目が利いて、野山に馴染んで育った。村を抜け出そうとして追われた両親とはぐれて山を歩いていて、石見銀山の山師の喜兵衛に拾われた。喜兵衛に山のことを教わって育ち、銀堀の男たちの手子として間歩(坑道)で働くようになる。時が過ぎ、戦国時代から徳川の時代に移り、銀山の様相も変わっていく。女になったウメは同じ手子の隼人に嫁ぎ、子を育てる。しかし、銀の産出が増えるにつれて、山の男たちの身体が蝕まれていく。そして隼人も。
 デビュー作の「魚神」は幻想的な作品だったが、この作品はそれに加えて坂東眞砂子の「山妣」と同じような雰囲気と迫力がある。圧巻の直木賞受賞作。