日明恩 |
それでも、警官は微笑う | ギフト |
それでも、警官は微笑う 2008年5月26日(月) |
池袋署の武本巡査部長は、年下の上司潮崎警部補とともに謎の密造拳銃を追っていた。銃を所持しているという証言のあった石島を見つけて職務質問しようとした時、若い男に邪魔された。男は、麻薬取締官の宮田だった。宮田は、5年前覚醒剤乱用防止推進員の泉が、覚醒剤を所持して拳銃自殺した事件を独自に
捜査していた。泉の娘聡子とは、かつて結婚を前提につきあっていた。宮田は、泉の遺品から横川模型店の包装紙を見つける。武本たちも実弾を持っていたカラーギャングの少年から、横川模型店の名前を聞き出していた。 出だしの雰囲気はお笑いミステリーかという感じだが、最近の江戸川乱歩賞風のハードなサスペンスだった。「キチク」というニックネームを持つ無骨な武本巡査部長と、上層部に顔の利くお坊ちゃま潮崎警部補のキャラクターがおもしろい。上司の安住刑事一課長や同僚の内田巡査部長、宮田の上司の麻薬取締官たちも真摯な熱血漢で、警察小説特有の 暗さ、いやらしさがないのがいい。各章のタイトルは茶道用語らしい。実際、お茶が事件の核心に迫るキーポイントになっている。最後に意外などんでん返しがあって、ほろ苦い思いも。 メフィスト賞受賞作。作者の名前は、「たちもりめぐみ」だそうだ。女性だった。 |
ギフト 2012年11月1日(木) |
その少年はいつも、「シックス・センス」のパッケージを見て、涙をこぼしながら立ちつくしていた。交差点に飛び出した少年の腕をつかむと、そこに血まみれの老女が立っていた。明生という少年には死者が見えたのだ。須賀原はある事件から刑事を辞めて、自分に喜びを許さない生活を送っていた。そして、ある疑惑を抱きながら、明生とともに未練を残した死者たちの謎を解き明かして、送り出す。 映画「シックス・センス」にインスパイアされた作品だと思うが、実は須賀原は死者だった、というわけではない。須賀原のかつての上司への敬愛がしばしば出てくるのが、ちょっと不自然でわずらわしい感じはするが、おもしろかった。 |