谷川直子

おしかくさま      

おしかくさま 2014年12月29日(月)
 離婚してウツ病になったおねえちゃんのミナミは四十九歳、妹のアサミは四十六歳。元高校教師のパパが一人暮らしの女の家から出てくるのを見たというので、ママに頼まれてミナミが尾行すると、おしかくさまという神様を信じている四人の老女におしかくさまのお遣いだと勘違いされているのだという。おしかくさまオフィシャルサイトを調べると、「おしかくさまはお金の神様です。おしかくさまを信仰すればあなたのお金が活性化されます」と書かれていた。一万円で「無紋のおふだ」という一万円札代の白い紙切れを買い、ATMで現金を交換して清め、「おしかくさん」といこっくりさんでおしかくさまと会話する宗教だ。ミナミもおふだを買い、おしかくさんのお告げによって、四人の老女、パパと一緒におしかく様へ会いに上野動物園へ行く。
 近年にないおもしろい作品。 父娘の確執、鬱病、食の問題、東日本大震災後のこと、そしてもちろん金についてと話題は盛りだくさんだし、ファンタジーのような展開が意外だった。父、母、姉、妹、そして妹の娘と語り手が入れ替わっているのも、それぞれのキャラクターが強調されておもしろい。文藝賞受賞作。