竹本健治

匣の中の失楽 涙香迷宮    

匣の中の失楽 2017年9月18日(月)
 学生を中心に、ミステリー好きがいろいろな縁で集まった12人のファミリー。年若い双子の兄弟のナイルズが探偵小説を書くと言い出した。設定も登場人物もファミリーそのままの実名小説で、最初に死ぬのは曳間だという。その曳間が倉野のアパートの密室で殺された。ファミリーはそれぞれアリバイを証明しあい、推理を披露するが、今度は真沼がファミリーが集まっている密室から姿を消した。第二章ではいきなり曳間が登場して、第一章はナイルズが書いた小説だとわかる。こんな調子で二転三転、数学、物理、易学その他のうんちくに、こじつけの見立てに、お粗末な推理合戦で、延々800ページ。正直、時間の無駄だった。

涙香迷宮 2024年9月5日(木)
 囲碁、将棋でよく利用される旅館で殺人事件が起こった。居合わせた最年少本因坊の天才棋士牧場智久は、死体が臥せっていた碁盤の碁石の数が多すぎることに気づく。一方、ミステリ・ナイトというイベントに参加していた牧場のガールフレンド武藤類子は、ちょっとしたきっかけから麻生徳司という黒岩涙香研究家と称する男と知り合う。後日、牧場と類子は麻生邸に招かれ、そして牧場が解いた暗号から見つかったという黒岩涙香の隠れ家の調査に参加することになる。関係者が集まって出かけた建物は地下に干支がつけられた12の部屋があり、各部屋の四面にはいろは歌の青銅板がかけられていた。暗号ではないかということで解読を始めるが、牧場が命を狙われる事態が起こる。
 暗号解きミステリーだが、暗号解きはあまりに冗長でくだらないし、事件とは何の関係もない。最終的に最初の殺人事件と結びつくのだが、その犯行もくだらなすぎる。本格ミステリ大賞受賞作 だが、この作家は読む必要ない。