高山羽根子

首里の馬      

首里の馬 2023年3月23日(木)
 未名子は、順さんという民俗学者の老女が作った『沖縄及島嶼資料館』で資料のインデックスカードの整理をしている。学校を休みがちだった中学生の頃、順さんに資料館に入れてもらってから通うようになっていた。未名子の本当の仕事は、問読者(サイヨミ)、『孤独な業務者への定期的な通信による精神的ケアと知性の共有』。雑居ビルの三階にあるスタジオからパソコンのオンラインシステムで、閉ざされた場所で一人で勤務している人相手に、クイズを出して雑談をする。そんな生活が続いている中、台風が過ぎた朝、庭に馬がうずくまっていた。そして順さんが入院して、娘の途さんから資料館を手放すことになると言われ、未名子はある決意をする。
 作者は本来SF作家だそうだが、この作品はどちらかといういと小川洋子をおもわせるようなファンタジーで、芥川賞受賞作にしてはおもしろかった。