高野和明

13階段 ジェノサイド    

13階段 2005年5月7日(土)
 保護司夫婦を惨殺したとして死刑判決を受けた樹原は、バイク事故で事件当時と記憶を失っていた。三上はたまたま立ち寄った居酒屋で客に絡まれて、突き飛ばして殺人を犯してしまい、2年の刑を受けていた。仮釈放されて東京の実家へ戻った三上を待っていたのは、補償に苦しむ家族の姿だった。そこに刑務所の刑務官だった南郷がやってきて、樹原の冤罪を晴らす仕事を依頼される。依頼主からは高額の報酬が用意されていた。調査のためにアパートを借りて住むことになった房総の町は、三上が高校生の時ガールフレンドと家出して補導された忌まわしい記憶のある町であり、また三上が殺した男の実家のある町だった。
 もし冤罪だとしたら真犯人は誰なのか、そして依頼主は誰なのか、三上の忌まわしい記憶は何なのか、南郷はなぜ刑務官の職を捨てて冤罪事件に関わろうとするのか。真犯人の殺人の動機は何なのか、何が真犯人の証拠になるのか。いろんな意味でおもしろい作品だった。これも江戸川乱歩賞受賞作。

ジェノサイド 2014年6月22日(日)
 アメリカ人の傭兵イエーガーは新しい仕事の依頼を受けた。彼には難病の子供がいて、治療費を稼ぐ必要があった。仕事は、コンゴ東部のピグミーの数十人の集団、一緒にいるピアースという人類学者、そして新種の生物を殲滅するというものだ。新種のウィルスに感染していて、感染が広がる恐れがあるということだった。大学院の創薬科学の研究をしている研人の、ウィルス学が専門だった父が急死し、しばらくすると父からメールが入っていた。指示に従って実家を調べると、起動しないパソコン、銀行のキャッシュカードがあって、メモに書いてあった町田のアパートへ行くと、未知の受容体を活性化させる物質を作るようにと指示があった。それは、ある難病の治療薬だった。
 人類の知力をはるかに超えた新生物が誕生し、それによる支配を恐れたアメリカ政府が抹殺を図る。傭兵たちとわずか三歳の新人類と、日本にいる正体不明の仲間が、その攻撃から逃れようとする。日本推理作家協会賞、山田風太郎賞受賞。「このミステリーがすごい」、「週刊文春ミステリーベスト10」1位。ミステリーというよりは、バイオサスペンスという感じだが、おもしろかった。