高野史緒

カラマーゾフの妹      

カラマーゾフの妹 2015年2月7日(土)
 『カラマーゾフ事件』の十三年後、モスクワの内務省で凶悪事件の捜査をしていた次男のイワンが、因縁の地スコトプリゴニエフスクに帰ってきた。長男ドミートリーの犯罪とされたこの事件を捜査し直すためだった。三男アレクセイはこの地で国民学校の教師の仕事をしていた。ホームズの近代的探偵術に興味を持つ公爵家のトロヤノフスキー、かつての事件の予審尋問を下裁判官のネリュードフ、そしてゴシップやのラキーチンもこの地を訪れていた。町の人々の関心を集める中、殺された父フョードルの墓が掘り起こされた。その結果は、一見ドミートリーの犯行を裏付けるようなものだったが、ラキーチン、そしてネリュードフが同じように撲殺される。
 ドストエフスキー自身が十三年後の設定で書く予定のあった続編に挑んだ作品。多重人格、コンピューターの前身である解析機関、ロケットによる宇宙旅行といった発想がドストエフスキーにありえたかどうかはわからないし、ちょっと広げすぎな感じもする。リーザとニーナの失踪も謎のまま。結論はサイコパスということになるのだろうか。江戸川乱歩賞受賞作。