高橋弘希

指の骨 送り火    

指の骨 2017年12月2日(土)
 戦闘で負傷した私は、野戦病院に収容された。そこには負傷した兵やマラリヤに感染した兵がベッドに横になっていた。次第に薬も尽きて、不明の風土病に感染する者もいて、次々と死んでいく。そうすると、衛生兵が指を切って遺品とするのだった。戦況が悪化し、預かった指を背嚢に入れ、病院を出て退却を始める。限りなく歩き続ける兵は次々と倒れ、私も木の幹に背を預け、死を待つことにした。
 三十代の青年が書いた戦場文学として話題になった作品。ニューギニアにおける戦闘のようだ。新潮新人賞受賞作、芥川賞候補作。

送り火 2023年12月27日( 水)
 歩は商社勤めの父の転勤で、青森の平川市近くの山間の集落に越してきた。転向した中学は来春廃校になり、全生徒で十二人だった。晃という生徒が中心的人物のようで、燕雀という花札のような賭けで仲間の稔を虐めていた。夏休みのある日、歩は電話でカラオケに呼び出される。
 他に、「あなたのなかの忘れた海」と「湯治」。三作とも、意図がよくわからない。初めて読んだ作家かと思ったら、「指の骨」という慎重新人賞受賞作を読んでいた。この作家は、作品ごとにテーマを変えているようで、青森を取り上げるのもこれが最後だそうだ。昭和の短編小説的な文体、昭和の芥川賞受賞作的な作風、という印象。