平安寿子

素晴らしい一日 グッドラックららばい    

素晴らしい一日 2006年3月1日(水)
  「素晴らしい一日」:会社が倒産して三十で結婚もできず、そんなある日昔の恋人に貸した金を回収しようと思いつく。その男を探し出して、男がいろんな人間から借金して回るのに一日着いて行く
 「アドリブ・ナイト」:金曜の夜待ち合わせしていると、全然違う名前で呼ばれ、人違いだというのに、家出娘の代役をしてくれと連れ出される。
 「オンリー・ユー」:会社の帰国子女の女の子との初デートの帰り、携帯に高校時代のガールフレンドからメールが入っている。なぜか他の女とあっていると電話をかけてくる。
 「おいしい水の隠し場所」:なじみの弁護士事務所へ行くと、産廃業者の問題で相談に来ていたのは高校時代の憧れの人だった。
 「誰かが誰かを愛している」:部下に相談を持ちかけられ、いよいよ仲人かと思ったら、派遣社員の女性に子供ができておろす費用を渡したという話だった。しかもその女性は・・・。
 「商店街のかぐや姫」:商店街のマーケットで店開きの準備をしていると、夫から電話があり、ホテルにお金を持ってきてくれということだった。
 おもしろかった。しっかりものの女性にだらしないが憎めない男、人物も魅力的だしストーリーもおもしろい。文章もかなり才気走っている。 オール読物新人賞受賞作。

グッドラックららばい 2006年7月13日( 木)
  片岡積子が卒業式の後帰宅すると、父信也がいて照れ笑いをしながら、母が家出したと告げた。名門お嬢様校への進学が決まっている妹の立子は、怒り狂い、信也の姉佐代子伯母に泣きつく。
 信也は高卒で地元の信用金庫に就職し、会社ではただそこにいるだけの<文鎮>とあだ名されているが、本人は重みがあると解釈している。趣味は節約、生きがいは貯金。二人の娘の名前は積立貯金からとったものだ。姉の積子はいい加減なだめ男が好きで、職場職場で男を替えては小金を与えている。妹の立子は金持ちになるという唯一の目標に向かって邁進している。
 母の鷹子が家出してから、2年、5年、10年、15年、20年と家族のエピソードが続いていき、その間に鷹子の家出の事情も明らかにされる。各章ごとに家族のディテールが明らかにされ、関わる人たちも増えていく。佐代子伯母のような<まとも>な家庭にこだわる価値観から見ればバカ家族のドタバタ喜劇なのだが、全て都合のいいように解釈して満足している信也、人生楽しまなきゃと次々と居場所を変えていく鷹子、結婚や仕事に拘束されず日々楽しんでいたい積子、自分の夢の実現以外のことは眼中にない立子と、同じ家族でもまったく異なる価値観をもっていて、それでいてどこか家族のつながりというものを感じさせる人たちだ。そのほかの登場人物のキャラクターも皆おもしろい。
 全ページ、全登場人物、一字一句笑える、と言っていいほどの諧謔文の天才だ。